徒歩参詣

人生でやりたいことリストの1つ、徒歩参詣を果たしました。

東京の日本橋麒麟像から三重県伊勢神宮まで歩くというものです。

 

 

概要

この日記で書く大きな流れとしては

 

・背景

・そこで見たもの

・同じことをする人へ

・後日談

 

という感じです。

よろしくお願いします。

 

 

背景

4月から就職するわけですが、時間がかかる挑戦というものは学生最後の春休み中にしておくべきですよね。行動力のある多趣味人間を自負していますが、中でもまとまった時間が必要なものは旅行でしょう。

 

海外?行ったことのない島嶼部に行く?

 

いずれも働いてお金を稼いでからでもなんとかなりそうです。本質は、行き先ではなく何で行くか?という問題でした。飛行機、車、電車、船、自転車、いろいろありますが徒歩という選択肢がここで挙がったのです。周りの誰もやっていなくて(賞味期限がない話のタネになる)、自分もこれまでにやったことがなく、社会人になってからではおそらくできないであろうという今やるべき要素を満足していました。

 

すると今度は目的地です。四国のお遍路巡りをするという考えもありましたが、予算の都合と不慣れでセーブポイント(宿泊地)が欲しいということで却下、そこでお伊勢参りが挙がりました。調べてみると江戸の一大ブームとなり、およそ6人に1人がお伊勢参りをしたといいます。途中の宿場町には伊勢参りの人を無料でもてなす風習があったらしいのですが、飛脚や川を越えるときのお金を含めて、現在でいう170万円ほどの資金が必要となったそうです。それが今や東京駅の機械に2万円突っ込めば数時間後には現地です。便利になったものですね。

 

学生だとネットカフェで学割が効くので、快活クラブという系列ネットカフェで夜を明かしつつ東海道を進んでいくことにしました。夏は熱中症になっても誰も助けてくれなさそうということで、空気が乾燥している時期に決行しました(雨が降らなさそうだし)。計画自体は8月にしたので、半年待ちましたね。

 

 

そこで見たもの

旅をするときは毎回テーマを決めているのですが、日本人として東海道を歩き、天照大御神にご挨拶したいという想いで「江戸時代の伊勢参りを体験しよう」にしました。

 

2月の半ば、友達に背負うタイプのリュックを借り、日本橋に立ちました。

日本橋

 

途中の日吉では慶應義塾大学が学部入試を実施していました。

 

1日目は昼くらいにスタートしたのであまり歩けず新横浜で夜を迎えました。基本的には国道1号線に沿って歩いていきます。

朝焼けの新横浜駅

 

江ノ島には友達の別荘(*1)があるので、そこで泊まらせてもらいました。そこの管理人さんには「やってることヤバすぎワロタ」という感じの反応をされました。至極当然です。

 

ちなみにこの日、家庭教師をしていた高校生から慶應合格の報を受けました。嬉しい限りですね。

 

喜びも束の間、待ち構えるのが箱根越えです。標高は1000メートルを超える箱根峠、ありえないほどの急斜面、そして雨。江戸時代の石畳を通りましたが、ぬかるんでとても滑りました。なんで石畳にしちゃったんですか?

箱根旧街道

 

ここで肉離れでもしたらきっと誰も助けてくれません。痛む脚を庇いつつ慎重に歩を進めました。暗くなる前になんとか三島まで降りてくることができましたが、足の裏はマメだらけです。江戸時代の人も毎晩マメをつぶすのが日課だったようです。にしても健脚だな。

 

脚が痛くなるとはどういうことか、具体的に説明してみます。まず膝の裏の筋肉が張り始めます。階段を登るときに体重が掛かると「ピキッ」となります。けっこう怖いです(ケガしたらチャレンジ終了なので)。それをかばうと脚の付け根、鼠蹊部が痛み始めます。そして同じくらいに靴擦れによる表面的な痛みが現れます。休憩できる場所に腰をおろすと、筋肉が固まります。運動部だったのですがこれは初めて経験しました。座ったときの膝の角度に固定されてしまい、本当に歩けなくなるのです。ぐぐぐっとなんとか曲げても痛い、伸ばしても痛いという状況で、本当にしんどかったです。

 

シップは毎日20枚くらい使いました。いろいろ試しましたが、サロンパスが最強でした。同時に筋肉をつけるため、毎日プロテインを飲み、静岡ではさわやかでハンバーグを食べました。すると静岡市あたりから体が慣れ始め、寄り道や考え事ができるようになりました。普段はヒキニートしているので、「おい普段自重すら支えてないんだからこんなことできると思うなよ」と脚に怒られていましたが、少しずつ静かになっていくのを感じると人間の順応性の高さに感謝という感じです。

 

途中、富士市では久々に晴れて綺麗な富士山を拝むことができました。インスタグラムで有名なスポットを通りましたが、被写体がブスすぎたので自分の写真は撮りませんでした。

富士山に至る道

 

富士山って本当に大きいです。押上でスカイツリーを見たときの感覚に近いです。そしてこんなに高いのに、周りに高い山がなくて裾野が綺麗に映るのが偉いんですよね。人生でやりたいことリストのうちの1つに富士登山があるので、いつか登りたいですね。ちなみに江戸時代の人は伊勢参りの帰りに寄り道して富士登山していた人もいるらしいです。健脚どころの騒ぎじゃねえぞ。

 

富士を出ると難所、薩埵峠です。割と海沿い歩いているんですけど、関係なく山や峠があります。メンヘラみたいです。

薩埵峠

 

現代文明のおかげで海沿いを辿っていけます。東海道線国道1号線とともに富士山を望みます。

 

由比、清水と進み、ようやく静岡です。静岡ではお店の開拓をいくつかしました。途中途中で美味しいものを食べていかないとやってられません笑。まずはおそば。

手打ち蕎麦 たがた

 

ずっと行きたかったお店の1つです。イタリアの塩、静岡のわさび、天ぷらをお供に。塩を少しつけて蕎麦を啜ると薫りが立つので大好きです。

 

食べてみると今まで味わってきた中でも指折りの薫り高さです。店主さんが「これ美味しいでしょ笑」とニッコニコで色々教えてくれました。産地は秘密にしてほしいとのことですが、チベット在来という種類を使っているようです。2枚目は長野県黒姫産。やはり蕎麦は国産に限りますね。近くにあったら通うレベルです。静岡に来たらまた寄ります。

 

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静岡を出るとすぐに安倍川です。安倍川餅の元祖、創業は文化元年、昔ながらの茶屋という雰囲気のお店で安倍川餅を食べました。

安倍川もち せきべや

 

つきたての柔らかさ、米を強く感じる味わい。漉し餡ときな粉と砂糖で。ばかうめえですね。静岡土産にありだなあ、と自分用メモに加えます。静岡駅から徒歩で15~20分くらいです。

 

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国道を少し外れ、静岡の山間部に。東海道五十三次でいう岡部宿、宇津ノ谷です。

岡部宿

 

絵を見た瞬間に「あ!ここじゃん!」となりました。写真だとわかりづらいですが、背後から写真の左くらいを川が流れています。同じ画角で撮りたかったのですが、普通に川の上で行けませんでした。

 

浜松を越えると浜名湖で、愛知県との県境です。東海道新幹線によく乗る人は「なんか海の上走ってね?」となるあの場所です。実際、浜名湖汽水湖で、湖には海水が混じっています。

 

うなぎを食べたかったのですが、高いのもありますし営業時間と待ち時間の兼ね合いから今回はパスしました。諦めてコンビニでおにぎりとか買って食べました。今思えば餃子食べればよかったですね。

弁天島 赤鳥居

 

赤鳥居の奥に見えるのが国道1号線、歩行者は入れません。

 

愛知県に入ると雰囲気が変わります。フィーリングな部分になるのですが、静岡と愛知って何かが違いますよね。山肌の茶畑から平地のキャベツ畑になり、景色が変わる、という感じの。あと愛知県に入って牛を見ました。いや、見てないけど、そういう強烈な匂いがしました。

 

東海道はこんな感じの松並木が見られます。徳川家康公が街道整備の一環で、一里塚とともに置かれ、木陰や風雪しのぎの場を与えたようです。私が歩いた時も「あ、この道で合ってんだな」という安心感を得られました。

東海道 松並木

 

そういえば豊橋は家康公の本拠地でしたね。ちゃんと感謝しとけばよかった。

 

豊橋からは渥美半島に抜けました。コンビニはないし、お店もありません。山はあります。

河津桜と菜の花

 

渥美半島は初めてきましたが、菜の花が名物らしいです。

 

船で鳥羽まで抜けました。三重県のイメージが松阪牛と伊勢海老しかなくて。一人で松阪牛食べるのは流石に虚しいがすぎるので伊勢海老だけでも、と思い食べてきました。

目の前で捌いてくれた伊勢海老

 

鳥羽からは3時間程度で伊勢市です。

 

ゲストハウスに荷物を置いてウイニングランです。まずは外宮です。

外宮

 

お参りして、1時間ほど歩いて内宮です。この頃には「5kmか、余裕で歩けるな」という思考になっていました。

内宮

 

感動です。知床を訪れたとき、すごくいい曲を聴いたとき、そんな全身が震える感動をしました。

 

伊勢に宿を取ったので、早朝にもう一度お参りしました。京都のお寺もそうですが、本当に行きたい場所は朝の5時や6時くらいに行くととても空いていていい写真が撮れます。

早朝参詣

 

早朝の、木々に囲まれた参道の厳かな空気を感じます。

 

大変という言葉では表せないほど大変な旅で、これまでの人生で指折りに苦労したことに入るのは間違いありませんが、やってよかったと思います。

 

 

 

同じことをする人へ

まずは持って行ったものです。

 

携帯(宿を探す)

充電器

財布(小銭はできるだけ作らない)

着替え一式(上と下1着ずつと下着を何枚か)

カミソリ(ネットカフェにはない)

御朱印

非常食

 

東海道には多くのコンビニがあり、非常食は不要でした。荷物を軽くするために箱根を越えたあたりで食べました。

 

行動時間は大体7時くらいから17時くらいですね。19時を過ぎると暗すぎて歩けません。

夜の浜松付近

 

浜松市街地から数キロでこの暗さです。こうなると車の灯りで歩道を探すしかありません。こうなる前に宿にたどり着いている必要があります。

 

そして重要なのがマップアプリを過信しない、ということです。実際に行ってみたら歩行者が通行できない、というものもありました。トンネル、高架、海沿いは特に注意し、前日の段階で通行可能かどうか、グーグルアースのような機能で実際に歩道があるかどうか、歩けるかどうか確認しておくと良いでしょう。

 

また、水分管理も重要です。山間部、田舎ではコンビニや公園、お店も少なく、トイレに困ります。喉が渇いて困ったことよりも、トイレに行きたくて困ったことの方が圧倒的に多かったです。

 

 

 

後日談

伊勢のゲストハウスの人に聞いた話ですが、内宮と外宮ではなんかバチバチしてるみたいです。内宮の周りはあまり宿を作らず、全て外宮に任せていて、一方で内宮周りはおかげ横丁を中心に飲食系が栄えていますが、外宮はさっぱりです。

 

そして内宮周りの飲食店は17時くらいに一斉に閉まります。観光地らしくないのですが、これもいざこざの影響、らしいです。

 

帰りは青春18きっぷで帰ってきました。せっかくなので前から行きたかった長崎に寄ってきました。

鍋冠山公園 世界新三大夜景

 

こういう無茶な行程を組めるのは一人旅の特権ですね。

 

 

 

*1 50歳くらいの友達。参加していたインターンシップの主催の人で、そこで仲良くなって「お前東大生だからウチの子の勉強みてくんね?」という家庭教師の関係になり、内申オール3で私立高校しか見えない状態から偏差値70の公立高校に合格させた。「あなたのおかげでここが買えたからいつでも来てね」と言われている。潮の匂いが嫌いなのであんまり行ってない。