1-8 再保険
1-8「再保険」について見ていきます。
「損保数理でやった〜知ってる〜」と言ってホゲホゲ読んでいるといつの間にか置いていかれます。ちなみに注意深く読んでも置いていかれます。
表現や説明が難しい分野であることは間違いなく、私も上手い文章は書けないかもしれませんが、ちゃんと読んでもらえたら理解してもらえるように頑張ります。右も左も分からない準会員を想定して書いているので、試験で同じ文章を書くと試験委員にはあまり良い印象は持たれないでしょう。教科書に何が書いてあるかを理解するための、あくまで補助的な資料として活用していただければと思います。
また、ここではわかりやすく元受保険会社、再保険会社という表記をしていますが、教科書では正確な表現として出再保険会社、受再保険会社という表現をしています。正確なのですがよく読み間違えるので注意してください。
1-5変額年金保険についてまとめたとき、12000字くらいで数日潰れたので、さっくりまとめていこうと思います。あと毎度間違っているところがあったらすみません。
概要
今回の日記の流れとしては、
・なんのための再保険か
・再保険以外の手段
という感じです。それではよろしくお願いします。
再保険の目的
再保険とは、保険会社が加入する保険のことです。損保数理では、再保険加入によって保険会社の破産確率を減らすことができるということを学びました。実務ではもっといろんなことに活用されています。まずは目的から見ていきましょう。
元受保険会社が再保険を契約する目的として、伝統的、非伝統的という区分をしています。個人的には経済実質的、会計経営的というように読み替えています。このうち伝統的な目的から見ていきます。
伝統的な目的
まずは、元受保有限度を超過する額を出再するという目的があります。個人で保有できるリスクに限度があるのと同様に、元受保険会社にもリスクの保有限度があります。手持ちのお金500円なのに数億円規模の保険金をもつ保険契約は扱えないですよね。
また、保険会社からすると、みんな保険金額500円なのに1人だけ保険金額数億円というのもよくないですよね。どうよくないかを言語化すると、保険業の基礎である大数の法則が働かないということです。この保険金額が大きい人が死亡するとすぐ破産しそうです。こういう問題を回避するために、まず保有限度額を大数の法則が機能する水準に設定し、競合上の観点から定められた最高保険金額との差額を再保険に出すということをしています。
また、集積リスクの移転にも利用されます。大数の法則は、各サンプルが独立であることを要求しますが、独立性が保たれないときは巨額の支出が発生しえます。これを回避するために再保険が活用されます。地震や台風のような災害死亡によって特定の地域に集中的な被害をもたらした場合に集積リスクが発現します。
保険経営の安定を図るために、一定額を超えた部分の保険金支払いを再保険会社に肩代わりしてもらうという契約をします。
他に、未経験リスクの移転という目的もあります。新しい保険やリスク細分化保険の発売がそれです。
最も信頼することができる自社データが存在しないため、元受保険会社が算定した保険料率は正確なものではない可能性が高いでしょう。しかし、再保険会社はいろんな保険会社のデータを持っているため、一般に元受保険会社よりも豊富なデータを持っています。そういった再保険会社と再保険契約を締結すると、元受保険会社としてはミスプライシングリスクを軽減することができ、再保険会社としては既知のリスクの保険を引き受けることで収益を得られるということですね。
再保険会社が豊富なデータを持っているということは元受保険会社よりも精度の良い安全割増を行うことができるということで、再保険会社が提供する保険料率は元受保険会社の保険料率よりも低廉なものとなることが多く、再保険会社に再保険を出再することで元受保険会社は契約者に低廉な保険料率を提供することができます。
ということで、元受保険会社の保有限度額を超過する部分の出再、保険金支払の集積リスクの移転、未経験リスクの移転、競争的な料率提供という目的を総称して伝統的な目的としています。
非伝統的な目的
再保険の活用によって、財務諸表を改善する効果が期待できます。保険金支払を再保険によって平準化することで収益の安定、ソルベンシーマージン比率の改善が見込まれることは直感的にわかりやすいかと思います。
後述する財務再保険は、再保険契約時点で将来収益に相当する額を手数料として元受保険会社に渡す内容になっているので、契約開始時点で締結すれば新契約費による圧迫から解放されることになります。特に、設立からまもない保険会社の場合は、初年度に自由に扱える資金を確保することができるので、効率的に資本を活用することができ、事業をより早く成長させることができます。
これは株式会社が成長する仕組みと同じですね。人から資金をもらって成長して、収益が出たらお金出してくれてありがとうとリターンを返すのが株式会社ですが、効率的な資本活用が事業を促進させる良い例でしょう。自力で資金を確保してから事業を始めるようでは、集めるまでに何年もかかって時機を逃してしまう上、成長速度も比較的遅いです。資金は人から集めて後で返すと効率的、という考えは株式会社、国の補助金をはじめ、再保険においても同じです。効率的な資本活用は資本収益率の向上にも貢献します。
また、この手数料はどのタイミングで受け取るかを再保険会社との合意があれば自由に選択することができるので、収益認識のタイミングの変更を期待できます。
また、財務諸表の改善にも関連しますが、特定のビジネスゴールを達成することも目的することがあります。新契約費を抑制できることで、資本の減少や増資の必要性を抑制できます。新設間もない会社にとっては嬉しいですね。
収益が安定することによって、課税所得が平準化します。繰越損失の適用期間が終了する前に収益が計上できれば、現時点では収益の前倒しによる収益の増加はある一方で繰越損失によって損失を計上できるので、節税にもつながります。
また、高いソルベンシーマージン比率や高い収益性、収益が安定していることは外部関係者の目から見て「いい会社だな」と思われますね。すると格付け会社から高い評価を得られて、投資家の目に留まりやすくなりますね。
収益が安定していれば、将来収益が予想しやすく、客観的な価値が算定しやすくなります。これは円滑な買収及び株式会社化に貢献します。
付随的な目的
付随的な目的として、再保険会社の豊富な経験、知識を活用することがあります。元受保険会社と再保険会社が共同で保険商品開発をして、「情報提供感謝やで」と報酬的な意味で再保険に出再し、「ええんやで」ということもあるでしょう。
また、再保険は元受保険会社の一定の損失を保険事故としているため、保険会社の再保険引受には制限がかけられています。
どういうことかを理解するために、まずは保険業第3条第4項を引用します。
生命保険業免許は、第一号に掲げる保険の引受けを行い、又はこれに併せて第二号若しくは第三号に掲げる保険の引受けを行う事業に係る免許とする。
一 人の生存又は死亡に関し、一定額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保険
二 次に掲げる事由に関し、一定額の保険金を支払うこと又はこれらによって生ずることのある当該人の損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険
イ 人が疾病にかかったこと。
ロ 傷害を受けたこと又は疾病にかかったことを原因とする人の状態
ハ 傷害を受けたことを直接の原因とする人の死亡
ニ イ又はロに掲げるものに類するものとして内閣府令で定めるもの
ホ イ、ロ又はニに掲げるものに関し、治療を受けたこと。
三 次項第一号に掲げる保険のうち、再保険であって、前二号に掲げる保険に係るもの
一は生命保険、二は医療保険、三は再保険のことです。三で次項が参照されているので、保険業第3条第5項についても一旦目を通しておきましょう。
損害保険業免許は、第一号に掲げる保険の引受けを行い、又はこれに併せて第二号若しくは第三号に掲げる保険の引受けを行う事業に係る免許とする。
一 一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険
二 前項第二号に掲げる保険
三 前項第一号に掲げる保険のうち、人が外国への旅行のために住居を出発した後、住居に帰着するまでの間における当該人の死亡又は人が海外旅行期間中にかかった疾病を直接の原因とする当該人の死亡に関する保険
一は損害保険、二は医療保険、三は海外旅行の保険です。海外旅行の保険はFP受けたときにそんなのあるんだ程度でサラッと流したので覚えてません。思い出したら日記にします。
整理すると、生命保険会社が引き受けることのできる再保険は、「一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険」のうち、「人の生存又は死亡に関し、一定額の保険金を支払うことを約し、保険料を収受する保険」または「次に掲げる事由に関し、一定額の保険金を支払うこと又はこれらによって生ずることのある当該人の損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険」に関係するものということです。
つまり、再保険は元受保険会社の損失を保険事故とするものですが、その損失が発生した原因について、生命保険または医療保険による損失であることが必要ということです。よって、元受保険会社の保険金支払と再保険会社の保険金支払が連動している比例式再保険は生命保険会社が引き受けることができますが、非比例式再保険については生命保険会社は引き受けることができません。
一方で、損害保険会社は「一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約し、保険料を収受する保険」であればよく、生命保険や医療保険に係る損失に限定するといった条項はないので、比例式再保険、非比例式再保険のいずれも引き受けることが認められています。
一旦ここまでのことを頭に入れておいてください。
この後の議論はここまでの知識を前提としているものが多いです。
財務再保険
伝統的目的のもとでの再保険、非伝統的目的のもとでの再保険という目的の種類で再保険を区分することがあります。そして、平たくいえば非伝統的目的を達成する上で有効な再保険が財務再保険です。
非伝統的目的に関わり深い法律から見ていきましょう。法律がすべてを語っています。
保険業法施行規則第71条
保険会社は、保険契約を再保険に付した場合において、次に掲げる者に再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができる。
一 保険会社
二 外国保険会社等
三 法第二百十九条第一項に規定する引受社員であって法第二百二十四条第一項の届出のあった者
四 外国保険業者のうち、前二号に掲げる者以外の者であって業務又は財産の状況に照らして、当該再保険を付した保険会社の経営の健全性を損なうおそれがない者
2. 保険会社は、保険契約を金融庁長官が定める再保険に付した場合において、当該再保険に付した部分に係る保険契約から当該再保険に付した後に発生することが見込まれる収益を基に計算した手数料を収受したときは、当該収受した金額を責任準備金として積み立てなければならない。
3. 保険会社は、保険契約を前項の規定による金融庁長官が定める再保険以外の再保険に付した場合において、当該再保険から前項に規定する手数料を収受したときは、当該収受した金額を預り金として計上しなければならない。
第2項で述べられている「金融庁長官が定める再保険」は財務再保険と呼称され、平成10年大蔵省告示第233号で定義されています。
平成10年大蔵省告示第233号
第1条(財務再保険)
保険業法施行規則第71条第2項に規定する金融庁長官が定める再保険は、保険会社が保険契約を再保険に付した場合において、当該再保険に付した部分に係るすべてのリスクを移転することを約し、当該再保険に付した部分に係る保険契約から当該再保険に付した後に発生することが見込まれる収益を出再保険受入手数料としてあらかじめ収受する再保険であって、次に掲げるすべての要件に該当するものをいう。
一 受再保険会社が、国内及び海外の監督当局から再保険に係る事業免許を付与された保険会社であって、適格格付業者からAA-又はAa3の格付以上の格付を付与されている保険会社であること。
二 元受保険会社が受再保険会社から収受する出再保険受入手数料は現金によるものであること。
三 再保険契約が、出再保険群団がすべて消滅した場合又は元受保険会社による中途解約が行われた場合に限り、消滅するものであること。
四 受再保険会社による一方的な解約は、元受保険会社の再保険料の不払いによる場合を除き、できないものであること。
五 元受保険会社を清算し、保険契約をすべて消滅させる場合において、元受保険会社は、残存している出再保険群団の損失額を受再保険会社に支払う必要がないものであること。
六 元受保険会社が合併又は包括移転により保険契約を他の保険会社に引き継ぐ場合において、当該再保険契約が契約条件を変更せずに当該他の保険会社に引き継がれるものであること。
七 元受保険会社と受再保険会社の間の決済が、少なくとも3月に1回は行われるものであること。
2. 受再保険会社が、前項第1号に規定する格付を付与されていない場合においても、当該受再保険会社の業務又は財産の状況等に照らし、出再保険会社の経営の健全性を損なうおそれがないと認められるときは、同号に掲げる要件に該当するものとみなす。
第2条(種類)
財務再保険の種類は、次に掲げる2種類とする。
一 共同保険式再保険
二 修正共同保険式再保険
2. 前項第1号に掲げる共同保険式再保険とは、受再保険会社が、元受保険契約に係るリスクのうち、当該再保険に付された部分に係るすべてのリスクを出再割合に応じて引き受け、当該引き受けた部分に係る責任準備金の積立て及び当該責任準備金に相当する額の資産の管理を行うものをいう。
3. 第1項第2号に掲げる修正共同保険式再保険とは、受再保険会社が、元受保険契約に係るリスクのうち、当該再保険に付された部分に係るすべてのリスクを出再割合に応じて引き受け、当該引き受けた部分に係る責任準備金の積立てを行い、元受保険会社が当該責任準備金に相当する額の資産の管理を行うものをいう。
それでは解釈していきましょう。
まず、共同保険式再保険について軽く説明する必要があります。共同保険式再保険とは、元受保険会社が契約者から引き受ける条件と全く同じ条件で、再保険会社が元受保険会社から保険を引き受けるものです。基本的には比例方式が採用されるので、保険料、保険金、解約返戻金、事業費等がすべて同質で、出再割合によって元受負担のうちどれだけの割合を再保険会社が負担及び収受するかが決まるということです。
例えば、出再割合が100%であれば元受保険会社は存在するだけ邪魔な伝書鳩みたいな存在になるということですね。出再割合が50%であれば2社が全く同じ質、量を持ったリスクを保有する状況ということになります。
誰でも思いつきそうな再保険形態です。
次に、平成10年大蔵省告示第233号です。
第1条は財務再保険とは何かを説明しています。出再保険受入手数料を将来収益に基づいて算定することを前提として、一から七に挙げられている要件を全て満たすものが財務再保険と呼ばれるとしています。第2条ではその財務再保険は共同保険式再保険と修正共同保険式再保険のみに限られるとしています(逆に共同保険式再保険及び修正共同保険式再保険のすべてが財務再保険というわけではないので注意です)。
出再保険受入手数料とは、基本的に再保険会社から元受保険会社に渡される手数料です。元受保険会社として、ここでは新設間もない会社を想定しましょう。保険契約をとってきたら初年度に新契約費がドカッとかかる会計制度をしているため、契約初年度は保険料収入少ない、自己資本も少ない、それでも新契約費はかかるという状況で責任準備金を積み立てる必要があります。共同保険式再保険は、元受保険会社の「責任準備金積立の原資が欲しい」という要求に応えるため、引き受けた部分から生じるであろう将来収益を前渡ししているということです。すると、新設間もない会社であっても契約初期に資金を得ることができ、責任準備金の積立原資とすることができるわけです。このように再保険を活用して資金を調達するものをreinsurance financeと言います。
財務再保険は財務面の目的のもとで活用される再保険ということですね。しかし、契約初期に将来得られるはずだった収益を前借りしすぎると、契約後期になって収益があまりないのに責任準備金の積立が求められるという首が回らない状況になりかねません。保険用語で言うと「責任準備金の積立不足」と言う状況になりかねないと言うことです。そのため、このような資金調達をするためにはいろんな条件を満足することが求められています。
これを念頭に置いて、第1条の条件を見ていきましょう。
まず、「再保険に付した部分に係る保険契約から当該再保険に付した後に発生することが見込まれる収益を出再保険受入手数料としてあらかじめ収受する再保険」であることが前提となっており、出再保険受入手数料が将来収益に基づいて算出されていることが必要となります。「だいたいこれくらい!えいや!」で出再保険受入手数料を決めた場合は財務再保険とは認められないと言うことに見えますが、実情は少し違うようです。出再保険受入手数料の額は基本的に将来収支の現在価値を基準として、双方の合意のもとで定められますが、その額が新契約費の出再割合部分を大きく超える場合はその合理性が求められます。これが将来収益を先払いしているとみなされる場合は、責任準備金の積立不足に関する懸念が表面化するため、財務再保険とみなした上でその規制(監督官庁への届出や開示)を受ける必要が生じます。そのため、必要がない場合には財務再保険に該当しないように条件を設定する必要があります。
一の条件は再保険会社の格付けについてです。ちゃんとした会社であってくれよ、という条件ですね。なお、第2項において、格付けとして具体的な指標がなくとも業務又は財産の状況に照らして、元受保険会社の経営の健全性を損なう恐れがないと認められるときはこの条件を満たしているとみなされます。
二の条件は出再保険受入手数料を現金でやり取りしてください、というものです。保険業法施行規則第71条の方の解釈でも言及しますが、保険業法施行規則において、財務再保険における出再保険受入手数料は責任準備金積立の原資にしなさいということが明記されています。責任準備金の原資に当てられる資産は、契約者保護の観点からちゃんとした裏付けがあって欲しいですよね。現金であれば流石にその問題ないだろう、ということですね。
三の条件はそのまんまですね。再保険契約が消滅するのは、再保険を付けた保険契約がそもそも全部なくなっちゃった場合、および元受保険会社が「やっぱ大丈夫っす」と解約した場合に限られるということですね。元受保険会社が再保険会社に責任準備金積立原資をくださいとお願いしている再保険形態なので、元受保険会社がいらないといったら再保険会社側は引き止める理由がありません。
四の条件についてもそのまんまで、再保険会社からの一方的な解約は元受保険会社の再保険料不払いを除いてできないものであることです。保険者側よりも契約者側の権利が強いのは再保険でも同じということですね。
五の条件は清算時に元受保険会社が再保険にかかる損失額を再保険会社に支払わなくてもいいとするものです。わかりづらいですが、出再保険受入手数料が将来収益に基づくものである一方で、破産清算時においては得られるはずだった将来収益がなくなってしまうわけです。再保険会社は「いや清算時以降の収益に相当する出再保険受入手数料返せよ」と元受保険会社に言いたくなりがちですが、それはできないよ、ということですね。知識経験が豊富な再保険会社が契約したんなら、元受保険会社が破産して回収できなくなっても後悔すんなよということです。
六の条件もそのまんまですね。元受保険会社が合併または包括移転によって保険契約についても引き継がれる場合は条件の変更なくそのまま引き継がれることを求めるものです。
七の条件は決済が3ヶ月に1回行われることを求めています。二の条件と合わせて四半期決算時点においてきちんと裏付けのある資産を元受保険会社が入手できる状況を確保するための条項であると解釈しています(四半期決算を意識しているならそう書けばいいのにと思いますが)。
財務再保険を用いた保険会社の多くが経営破綻に陥ったことから、通常は風評リスクを考慮して財務再保険に該当しないように再保険契約を構築します。
前提条件たる、「再保険に付した部分に係る保険契約から当該再保険に付した後に発生することが見込まれる収益を出再保険受入手数料としてあらかじめ収受する再保険」に該当しないようにします。新契約の出再においては、新契約費の出再割合部分という目安がありましたが、既契約の出再においては出再保険受入手数料を設定しない取引とします。経済実質的には、再保険料を出再保険受入手数料によって相殺している状態となりますが、出再保険受入手数料がある場合は将来収益の先払いと見做されかねないというわけで、再保険料と出再保険受入手数料をともに0とすることで規制の問題をクリアしているみたいです。なんかちょっとずるい?
第二条は財務再保険は共同保険式再保険と修正共同保険式再保険に限定する条項です。
共同保険式再保険は全てのリスクを出再割合に応じて元受保険会社と分担するもので、再保険会社が責任準備金の積立及び対応する資産の管理を行います。
修正共同保険式再保険は共同保険式再保険のうち、責任準備金に対応する資産の管理を再保険会社でなく元受保険会社が行うとしたものです。
再保険の種類の章で詳述します。
さて、保険業法施行規則第71条に戻りましょう。
「保険会社は、保険契約を再保険に付した場合において、次に掲げる者に再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができる」とあることから、元受保険会社からすると、再保険契約を締結することにより責任準備金が削減されます。これは嬉しいですね。
しかし、再保険契約を締結すると見込んでいた将来収益を犠牲にすることになるため、再保険のつけ過ぎにも注意が必要です。財務再保険の場合も例外なく注意が必要で、出再保険受入手数料として責任準備金積立の原資のために将来収益を前借りしているため、出再保険受入手数料はきちんと責任準備金の積立のために使いなさいというのが第2項の言っていることです(出再保険受入手数料の受取に際して元受保険会社が保有する部分の責任準備金とは別に責任準備金を立てて積み立てるというわけではないです)。換言すれば、財務再保険における出再保険受入手数料の使途は元受保険会社が保有する部分の責任準備金の積立に限定されています。8-13の表におけるAですね。
将来収益に基づく出再保険受入手数料を収受しているが、大蔵省告示第233号第1条の一から七の条件のいずれかを満たさない場合は財務再保険に該当しないことになります。このとき、出再保険受入手数料は収益認識することができず、預かり金(負債勘定項目)として計上することになります。8-13の表におけるBです。
一方で、出再保険受入手数料を将来収益を基礎とせずに決定した場合は、8-13の表のCに該当し、なんの規制も受けないことになります。ということで、Bに該当して変な規制を受けるよりはCにしてしまった方が自由ということだと思います。実際、告示発出直後にBの例は数例見られただけに留まり、その後は基本Cの再保険が主流であるようです。
しかし、なんの規制も受けないとはいえ、変な再保険契約を締結することは契約者保護の観点から望ましくありません。保険計理人は、再保険の実施及び毎年の将来収支分析において再保険が財務面に与える影響を分析して経営者に報告することが必要となるとともに、会計監査人に十分な説明を行なってちゃんと再保険であることを認識してもらうことが求められます。
再保険の種類
生命保険会社が引き受け可能かどうかという観点から、比例式と非比例式に区分します。生命保険会社が引き受けることができる比例式再保険には危険保険料式再保険、共同保険式再保険、修正共同保険式再保険があり、生命保険会社が引き受けることができない非比例式再保険にはエクセスオブロスカバー(ELC)、ストップロスカバーがあります。
危険保険料式再保険
元受保険契約の形態に拘らず、再保険契約が自動更新一年定期保険となっている形態です。単純な仕組みであるがゆえに事務管理も容易で、広く利用されています。再保険料率についても一年定期保険の料率が使用され、保険期間が短いことから予定利率は考慮されません。一応、期中の契約内容変更に対する事務手続きの簡明化のためにYRTではなくMRTとして一月定期保険とすることもあるようです。教科書に記載されていない内容ですが、実情と乖離している部分は試験にも出しにくいのではないかと個人的には思います。
さて、比例式再保険であることを念頭に置くと、定期保険となっていることから、元受契約の契約者が死亡(または医療保険における保険事故が発生)した場合に再保険金支払が発生することがわかります。そのため、死亡率及び罹患率といった発生率関係のリスクのみが再保険によって移転されることとなり、解約失効リスクをはじめとしたその他のあらゆるリスクは元受保険会社が保有したままになります。
元受保険金額から責任準備金として積み立てられている額を控除した額が危険保険金額となるわけですが、この危険保険金額のうち出再割合に相当する部分を危険保険料式再保険として出再するということですね。責任準備金に相当する部分は元受保険会社が積み立てており、元受保険金額との差額は他の契約者の危険保険料部分や再保険金から調達して支払うことになります。
ちなみに教科書の当該部分及び2017年度試験解答のコピペされている、「危険保険金額は、理論的には出再保険金額から消滅時の責任準備金を控除した金額である」という記述は誤解を招く表現であると思われます。
参考にしたもの
危険保険料式再保険の項目に「生命再保険において、死亡危険を中心とした保険給付リスクを再保険の対象とし、元受保険金額から責任準備金を控除した金額(危険保険金額)に基づいて保有・出再額が決定される再保険方式」とあります。
4.2.3「生命再保険」の危険保険料式再保険の項目に「死亡危険を中心とした保険給付を再保険の対象とし、元受保険金額から当該契約にかかわる責任準備金を差し引いた金額をベースとして保有・出再額が決定される再保険方式」とあります。生保の教科書よりわかりやすい
1-(2)において、再保険金額は元受保険金額から責任準備金額を控除した額に出再割合を乗じている記述が正しいとされています。
(引用内の下線は筆者が付け足した)
良心的に読み取ると、元受契約における保険金額を出再保険会社にとっての元々の保険金額と同等のものと解釈し、これを出再保険金額と表現している可能性があります。再保険に出再される、再保険契約における保険金額と紛らわしいのでやめていただきたいですね。
また、責任準備金が地を這いつくばっている(ずっと低い水準で推移するという意味)短期の定期保険や、給付金支払いが発生しても契約が消滅しない医療保険の場合は、出再保険金額を元受保険金額と同様になる、と読むことができるかと思います。
なお、実務の簡素化を目的として出再保険金額を経過年数のみの関数(tとSの関数で表されることからtS式と言うらしいです)とすることもあるようです。
危険保険料式再保険では発生率関係のリスクだけが移転され、かつ通常一年定期保険であることから財務諸表に影響を与えることは難しく、基本的には伝統的目的のもとで活用されます。
元受保険会社の保有限度額を超過した部分の出再という目的のもとでは、高額支払部分の負担を移転するという形式が求められることになるため、超過額方式が採用されます。また、出再するかどうかを各契約で詳しく吟味する必要がないため、自動再保険として出再されることとなります。
条件体契約に関して、経験が豊富な再保険会社の競争的な評点の提供を受ける場合は、各被保険者の状態について吟味することとなるので任意再保険の形態を取り、比例方式で出再されます。
非伝統的な目的で出再されることもないわけではなく、保険リスクが他のリスクと比べて過大である場合は危険保険料式再保険を用いて保険リスクを抑えることにより、ソルベンシーマージン比率を改善することが期待できます。一旦再保険料率を安全な水準に設定し、高い経験割戻率によってかなり正確な再保険料率を設定することによって、再保険コストを可能な限り低廉にするという工夫がなされます。ここで「再保険契約上死亡に係る保険責任は移転しているが、実質的なリスク転嫁は行われていない」ということが指摘されています。保険リスクの減少のみを目的としている場合、保険リスクに対応する保険金支出をある程度諦めて、危険保険料式再保険を利用しているということですね。つまり、死亡に係る保険金支出を危険保険料式再保険に係る再保険料支出にしてしまえば保険リスクは減らせるけれども、実質的な支出額はほとんど変わっていない、ということが言いたいのだと思います。
共同保険式再保険
共同保険式再保険は、再保険会社が個々の出再契約に関して元受契約の契約条件と全く同一の条件で保険責任を引き受けるもので、危険保険料式再保険の対をなす再保険の概念です。危険保険料式再保険は発生率関係のリスクのみを移転するものでしたが、共同保険式再保険は事業費支出等に係るリスクを含めた全てのリスクを出再割合に応じて移転するもので、危険保険料式再保険とは異なり責任準備金や責任準備金に対応する資産の移転を伴います。誰でも思いつきそうな簡単な仕組みですが、事務管理が煩雑です。
お金の流れについて整理しましょう。
まずは元受契約です。元受契約については契約者と元受保険会社の間でなされるもので、契約者は元受保険会社に対して保険金額に応じた営業保険料を支払う代わりに、元受保険会社に契約者のリスクが移転されることとなり、保険事故が発生した場合や解約失効が発生した場合に元受保険会社は契約者に死亡保険金や解約返戻金を支払います。ここまではいろんなところで学んだ通りです。
次に元受保険会社と再保険会社の間で交わされる再保険契約におけるお金の流れを整理しましょう。元受保険会社は再保険会社に営業保険料のうち出再割合に応じた部分を再保険料として支払い、元受保険会社のリスクを再保険会社に移転することとなります。超過額方式ではなく比例方式を採用した共同保険式再保険であれば、再保険料は営業保険料に比例することになり、営業保険料の何割、という形で決定できることになります。また、再保険会社が元受保険会社に支払う再保険金についても同様です。元受保険会社の支出である保険金、解約返戻金、事業費等すべての支出について、出再割合に応じた額を再保険会社が元受保険会社に渡します。
また、元受保険会社の責任準備金については、保険業法施行規則第71条により、再保険に出再した部分を責任準備金として積み立てないことができます。さっきこんなこと書いてあったなあと思い出してください。
保険会社は、保険契約を再保険に付した場合において、次に掲げる者に再保険を付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができる。
出再された部分は再保険会社側の責任準備金となり、再保険会社に当該部分の責任準備金を積み立てる義務が発生します。このとき、元受保険会社は再保険料を通して責任準備金に対応する資産を引き渡します。
また、共同保険式再保険には契約初期の資金需要に応えるという側面があるので、その目的を果たすために出再保険受入手数料が再保険会社から元受保険会社に渡されます。財務再保険とするための条件には出再保険受入手数料は将来収益に基づく必要があるというものがあり、財務再保険となった場合はこの出再保険受入手数料を収益認識して良い一方で責任準備金の積立に使わなければいけません。
出再保険受入手数料は費差益、死差益、利差益の全部または一部からなる将来収益を基礎とすることがありますが、ここでいう将来収益は再保険に付さなかったら本来得られていたであろう将来の収益を現在価値に割り戻したものという認識がよろしいかと思います。
さて、お金の流れについてざっとみたところで特徴について考えていきましょう。
まず、事務管理が煩雑です。各収入支出をひとつひとつ再保険会社と連携することになります。利差益や死差益に対応する部分の扱いは比較的楽ですが、事業費に関しては対応する区分の事業費を算定する必要があります。1-3「アセットシェア」のところでも事業費の合理的な配賦基準が求められていましたね。つまり、各契約の医務査定費用や営業職員報酬はわかりやすく区分できそうな一方で、会社で誰かが飲んだコーヒー代とか照明のための電気代などはどうやって配賦するのでしょうか、という問題です。契約の頭数で割って、各契約に1000円ずつ賦課することにすると、保険金額が50円の契約にも5億円の契約にも等しく1000円を付加保険料としてかけるというのはなんとなく保険料負担の公平性の問題が発生しそうですよね。ここでは、ある程度の合理性のもとで事務の簡便化を図るために保険料比例として配賦するようです。
元受保険会社は契約初期に新契約費で会計が圧迫されます。元受保険会社としては、初年度だけは出再保険受入手数料を多めにもらって新契約費による圧迫を軽減したいという要求があり(このように新契約費の圧迫を軽減することを目的とする再保険の形態をサープラスリリーフと言います)、そのために再保険会社もまた契約初期に出再保険受入手数料によって圧迫されることになります。再保険会社がかわいそうなことになる対価として再保険契約の利益なんですね。ということで再保険会社がかわいそうなことになることに目を瞑れば、元受保険会社、特に新設間もない保険会社にあっては契約初期に責任準備金に手持ちの資産を充当する必要がなくなり、自社の事業に資本を投下することができます。
また、出再保険受入手数料によって積立られる責任準備金は一定の条件のもとでソルベンシーとして算入することができるため、ソルベンシーマージン比率の向上にも貢献します(平成8年大蔵省告示第50号第1条の3の規定に基づく)。
以上のことから、再保険契約によって収益の安定、出再保険受入手数料の設定によって収益認識のタイミングの変更、効率的な資本活用によって資本収益率の向上およびソルベンシーマージン比率の改善を図ることができます。
元受保険会社のメリットについてみたところで、再保険会社のデメリットについて詳しくみていきます。
再保険会社としてはまず責任準備金の積立義務が転がり込んできます。負債が増えることで資産の増加が抑制されます。嫌ですね。
また、再保険料収入をもとに責任準備金を積み立てることが必要で、元受保険会社が勝手に決めた予定利率に基づく営業保険料を元手に責任準備金積立義務を全うすることが求められます。つまり、共同保険式再保険ではすべてのリスクが移転されるものの、投資リスクに関しては元受保険会社と再保険会社では資産運用政策や能力に程度の差があることから同質とはならない、というものがあります。再保険会社としては嫌ということです。
このことから共同保険式再保険は便利ではあるものの再保険会社の立場が弱いことから毛嫌いされており、主に強い資本関係を持つ会社間で見られる形態となっているようです。
この共同保険式再保険を使いやすいように改良したものが修正共同保険式再保険と呼ばれるものです。
修正共同保険式再保険
修正共同保険式再保険は、共同保険式再保険の一部分を変更した再保険の形態です。実務上の修正共同保険式再保険ではなく、実務上の資産留保型共同保険式再保険のことを法律上の修正共同保険式再保険とするらしいです。ご自身で調べられる場合は注意してください。
平成10年大蔵省告示第233号での共同保険式再保険の説明はこんな感じでした。
前項第1号に掲げる共同保険式再保険とは、受再保険会社が、元受保険契約に係るリスクのうち、当該再保険に付された部分に係るすべてのリスクを出再割合に応じて引き受け、当該引き受けた部分に係る責任準備金の積立て及び当該責任準備金に相当する額の資産の管理を行うものをいう。
修正共同保険式再保険の説明はこんな感じです。
第1項第2号に掲げる修正共同保険式再保険とは、受再保険会社が、元受保険契約に係るリスクのうち、当該再保険に付された部分に係るすべてのリスクを出再割合に応じて引き受け、当該引き受けた部分に係る責任準備金の積立てを行い、元受保険会社が当該責任準備金に相当する額の資産の管理を行うものをいう。
最後の部分の、「責任準備金に相当する額の資産の管理」の主体が異なることがわかります。つまり、責任準備金に対応する資産が元受保険会社から再保険会社に移転されず、投資リスクを元受保有会社がその一部を引き受けるように修正したものと言えます。投資リスク以外のリスクに関しては、共同保険式再保険と同様に元受保険会社から再保険会社に移転されます。よって、負債としての責任準備金は再保険会社が、責任準備金に対応する資産の管理は元受保険会社が行うことになります。
さて、共同保険式再保険を基礎として資産の移転を行わないように修正するため、修正共同保険準備金調整額という調整科目を活用します。投資リスクの移転の程度は修正共同保険準備金調整額の設定によって左右されます。
修正共同保険準備金調整額は期末の責任準備金と期始の責任準備金の運用結果の差額として求められます。なんとなく責任準備金繰入額の式と似ています。共同保険式再保険では再保険料に責任準備金対応資産に相当する部分が含まれていたので、修正共同準備金調整額で払戻しているという具合ですね。平成10年大蔵省告示第233号第1条の七において、元受保険会社と再保険会社は3ヶ月に1回は決済をするように定められていますが、修正共同保険準備金調整額についてもこの決済(再保険料とか再保険金とか)と同時に決済することが一般的であるようです。修正共同保険準備金調整額は責任準備金と運用利率の関数となるため、これらをどのように決定するかが論点となります。
責任準備金は平準純保険料式責任準備金かチルメル式責任準備金か、標準責任準備金かどうかによって変わるでしょう。こちらはあまり設定の余地がなさそうです。
運用利率は修正共同保険式再保険をModuled Coinsuranceと呼ぶことからmod-co利率と呼びます。mod-co利率は元受保険会社と再保険会社が合意のもとで定められ、再保険協約書の記載事項となります。
mod-co利率として誰でも思いつくような設定方法として、元受保険会社による実際の運用利回りを適用することが挙げられます。しかしこの設定方法では元受保険会社に運用を頑張るインセンティブがありません。下手な運用をして大損をこいても、修正共同保険準備金調整額を通して再保険会社が全部補填してくれるからです。ちょっと具体例を出しましょうか。
例えば、次のような状態を考えます。簡便化のために出再割合は100%とします。
・期末責任準備金 110
・期始責任準備金 100
元受保険会社が運用を頑張って10%の運用利回りを出せたとすると、期始責任準備金100と運用利回り10%の積は10となるので、110-100-10=0となって修正共同保険準備金調整額は0となります。
一方で、元受保険会社がサボって運用利回りが0%であったとすると、修正共同保険準備金調整額は110-100-0=10となり、元受保険会社は再保険会社から10の資金をもらえることになります。
さらに、元受保険会社が頑張りすぎて20%の運用利回りを出した場合は修正共同保険準備金調整額は110-100-20=-10となって今度は元受保険会社が再保険会社に対して10を支払わなければならない状況になります。
制度として破綻しているのがわかりますでしょうか。元受保険会社は運用をどれだけサボっても期末責任準備金を積み立てられるので、頑張る理由がないということになります。再保険会社側からしたら、たまったものではありません。元受保険会社の投資成績によって再保険会社は損失を被るリスクがあるということとなり、投資リスクは再保険会社側に帰属していることになります。再保険会社は当然これを嫌がります。
mod-co利率として実際の運用利回りを用いることのデメリットはまだあります。運用利回りは実際の成績に基づく数値なので、運用利回りの値が算出されるまでには時間がかかります。また、運用利回りの計算として売却損益や含み損益の取扱いについても厳密に定義しなければなりません。
一方で、mod-co利率として責任準備金計算基礎率における予定利率を用いた場合は投資リスクは全く移転されないこととなります。再保険会社の負債としての責任準備金はこの予定利率に基づいて増えていきますが、出再保険受入手数料を通して同額だけ元受保険会社への再保険貸が増えるからですね。
mod-co利率としては長期国債など市場の指標を用いるほか、mod-co利率の最低水準を定める、mod-co利率自体は保守的に定める一方で経験割戻に利差益還元条項を設けるといった対応が見られるようです。
財務再保険の恩恵を目的としない場合(ソルベンシーマージン比率の改善や新契約費支出の填補を目的とする場合など)、手続きの簡便化を図るため、四半期ごとの決済を現金の収受を伴わない再保険貸借勘定による手法も存在します。これは資産留保型修正共同保険式再保険と呼ばれています。
元受保険会社目線では、契約初年度(チルメル式責任準備金を採用している場合は契約初期)に出再保険受入手数料によって再保険会社との貸借は再保険会社への貸しが優勢です。契約年度の経過に伴って再保険料の支払いが嵩んで貸しの額が少しずつ減っていきます。出再保険受入手数料が将来収益を正確に反映していれば保険期間満了とともに再保険貸の額は0になります。
共同保険式再保険、修正共同保険式再保険を締結する再保険会社側のメリットとは一体どのようなものでしょうか。
再保険取引が行われる元受保険会社と再保険会社は通常別の地域に所在します。リザービング規制や、資本規制は地域毎に異なるのが通常ですから、リザービングコスト、キャピタルコストが安価な地域に所在する再保険会社に出再することで、保有するよりも有利な条件で再保険契約を締結することができます。
エクセスオブロスカバー
対象契約のいずれかに損害が発生し、その額があらかじめ定めた保有限度額を超過する場合、その超過部分のうちあらかじめ定めた填補限度額を限度に再保険金として回収するものであり、保険料の出再割合と保険金の回収割合が異なるため、非比例式再保険となります。事務手続きが比例式再保険と比べて簡便であることが特徴です。
エクセスオブロスカバーで移転される保険責任は死亡率や罹患率等の発生率関係に限られ、その保険金ペイオフの特徴からもっぱら集積リスクの移転を目的とします。
再保険事故発生の頻度と規模に応じてCat Cover(Catastrophe Cover)とワーキングカバーに分類されます。
Cat Coverは低頻度大規模の保険金支払に関する集積リスクを移転するための形態です。生命保険において保険金支払が同時に起こる状況はそうそうなく、主に災害を起因とするものとなります。そのため、保険事故として災害を原因とすることが定められています。保有限度額を高く設定することにより低頻度大規模損害に対応する形式にするとともに、再保険コストを低くしています。災害を起因とする形式なので、どの地域の契約群団を出再するかによって危険度は大きく異なります。
また、このような大規模災害が発生した場合において再保険金支払能力が確保されることが求められるので、危険分散の観点から元受保険会社とは別の地域で営業を行っている再保険会社に出再されます。元受保険会社と再保険会社が同じ地域にいて、台風で一緒に吹き飛ばされちゃったら保険金支払えませんからね。
そして、日本ではこのような集積リスクを放置できません。低頻度とはいえよく起こってますものね。とはいえ、集積リスクを数理的に分析することは困難です。地理データ突っ込んでシミュレーションするのが関の山でしょう。また、集積リスクというすごく大きいリスクを抱えているものを引き受けてくれる人もそんなにいないでしょう。ちゃんと保険金支払能力を持っている人にお願いしましょう。
一方、未経験のリスクを移転する形態をワーキングカバーと呼びます。
つまり、医療保険のように日額で支払う保険の保険金支払条件を拡大し、支払上限を高めた場合、拡大された部分についての経験を元受保険会社は持ち合わせておらず、このときに再保険会社にワーキングカバーとして該当部分を出再することにより、見経験のリスクを移転するとともに将来自社で賄うために必要な情報を収集することができます。
今はあんまり使われていないみたいです。
ストップロスカバー
保険期間中に発生した元受保険会社が保有する元受保険契約の保険事故全てに対して、純保険料収入に対する支払率が一定割合を超えた場合に、填補限度額として定めた額を上限として、超過支払率に相当する金額を再保険金として支払う形態です。
ストップロスカバーは支払率を基準として元受保険会社と再保険会社の保険責任分担を定めるというのが特徴です。ストップロスカバーによって移転される保険責任は発生率関係に限定されますが、想定を超える保険金給付金支払のリスクを移転する上では有効で、元受保険会社が十分な資本力がない小規模な場合に有効な再保険です。
いろんな再保険があっていろんな目的に使われることがわかりました。
最後に、再保険以外の手法によって同じ目的を達成する方法について検討しましょう。
再保険と類似の機能
保険会社のリスクマネジメント技術の向上により、保険以外の代替手段が出現しています。この代替手段を総称してART(Alternative Risk Transfer)と呼称します。
キャプティブ、証券化、ファイナイトリスク保険について簡単に解説します。
キャプティブ
事業会社が、自社の保険を引き受ける専有の子会社として設立する保険会社のことです。保険契約を締結している保険会社に対して、一部をキャプティブに出再することを依頼し、キャプティブはその全額を出再します。
保険料が過大な事業会社にとっては有効な経費削減策となるが、税制の変更に伴って節税を目的としたキャプティブは見られなくなったようです。なお、グループ間で保険契約を交わす場合は、Arm's Length Ruleという条件を満たすことが求められます。つまり、消しゴム1つを10億円で買ったことにして税金の安い国に資金を移動するというようなズルを認めないために、グループ間であっても他の保険会社と同等の条件で保険契約を締結することが求められます。グループ間の最適化を目的として再保険契約を締結する場合は、「グループ内の保険会社に出した方が安かったわ〜」で通すために、ときたまグループ外の保険会社に出再するということが考えられます。
証券化
集積リスクを資本市場に移転するための手段です。元受保険会社は再保険会社を特定目的会社として設立し、Cat Coverを締結します。特定目的会社はCat Bondと呼ばれる債券を発行し、元受会社から移転されたリスクを投資家に移転します。Cat Bondは一部元本保証型と元本非保証型があり、特定目的会社の保険事故発生の有無によって償還額が変化します。
資本市場の資金が活用できるとともに、投資家からあらかじめ資金が拠出されるために信用リスクを考慮しなくて良いという利点があります。一方、証券化スキームの構築等により、伝統的な再保険よりも割高となり、市場の金融商品との競争環境下で維持が困難になる場合があるという欠点もあります。
なお、主な目的が集積リスクの移転ですから、どちらかというと損害保険の方で使われるものかと思います。
ファイナイトリスク再保険
ファイナイトリスク再保険について確定した定義は存在せず、教科書にも記載はほとんどありませんが、通常保険者が引き受けることができないような大規模、算定困難なリスクについてのリスクファイナンス手法として用いられるものです。移転されるリスクが限定的となることから、この名称となっています。
保険金支払限度額(保険事故1件あたり、1年間あたり、保険期間通算など)が設定されていること、大数の法則が働きにくいオーダーメイドの契約が定められることが多いこと、損害率が低い場合は保険料の返還が行われるが損害率が高い場合は保険料の追徴が行われること、リスクに対応するため長期契約となることが特徴として挙げられるようです。
個人的にはオーダーメイド契約というところで解釈しており、多数の契約者を集めて大数の法則が機能する構造を構築する保険とは大きく異なるような気がします。それが、法制面、税制面、会計面で大きな議論を呼び、その結果として実質的なリスクの移転を再保険契約の要件とする定義が広まったものと解釈しています。
簡単にまとめるつもりが20000文字を超える大作になってしまいました。教科書の記載も難解で理解し難い記述も多く、裏どりにも時間がかかりました。この章について理解の一助となれば幸いです。
コメントしてくださるととても嬉しいです。
[参考文献]
1-5 変額年金保険
1-5「変額年金保険」についてみていきます。
教科書は15年前のもので読みづらい部分も多いかと思います。教科書が15年前の常識で語っているので、ここでもその常識を解釈して語っていくことにします。
多くの方に理解しやすい形で書いていこうと思います。間違ってたらすみません。
概要
この日記で書く大きな流れとしては
・変額年金保険とは何ぞ
・変額年金保険の構造が抱える問題に迫る
・定性的な問題を定量化しよう
・対応策について検討だ
という感じです。
よろしくお願いします。
変額年金保険とは
普通の保険商品は保険金額が定額です。まず保険金額をいくらにするか定め、保険金額に保険料率を乗じて保険料が算出され、その保険料をもとに責任準備金を計算するという流れがあるという理解が良いかと思います。
しかし、日本の低金利環境下では予定利率が1%を割ることもあり、契約者にとって魅力的な保険商品を生み出せずにいました。そこで出てきたのが変額年金保険です。利率というリターンを得るためには相応のリスクを取らなければならないということはCAPMが教えるところですが、ややアグレッシブな運用をすることによってリターンを上げていこうとするものです。
これまでの商品は安全第一で運用してきたわけですが、変額年金保険ではややリターンを重視した運用を行うため、保険会社としてはリスクの程度が異なる運用を抱えることとなります。ちゃんとリスクの程度に応じて別々に管理しましょうということで、それぞれ一般勘定、特別勘定で管理されることとなっています。
一般勘定は10年国債等を用いて運用しますが、特別勘定は保険会社が選択肢を提供し、例えばほとんどを株式に突っ込むもの、少しは債券とのバランスを考えたもの、グリーンボンドのようなESG投資を重視したもの、資産運用の会社に丸投げするものなどから契約者がいくつか選択し、資産の配分を決定していくということが考えられます。そのため、特別勘定は投資信託と同様の解釈をすることができ、運用成果によって上下します。この特別勘定残高が運用成果によって変動するという点が、この後の論点でかなり重要な性質となるので押さえておいてください。
保険会社はリスク分断の観点から、他業務との兼業が禁止されており、生命保険会社であれば生命保険商品しか販売することができません。また、日本では保険商品を売りたいといった場合には金融庁の認可をもらう必要があります。
被保険者が死亡または満期を迎えたときに保険金として特別勘定残高を支払うとすれば管理は楽チンですが、金融庁さんが「それは保険なんか?ただの投資信託やないんか?お?」と怒ってしまいます。「いやいや保険ですよ」と主張するために、通常は保険金額の最低保証を定めています。死亡したときの最低保証をGMDB、ある一定時点での生存に対する最低保証をGMLBと呼称します。他にも、解約返戻金の最低保証があったり、運用成果に応じて最低保証額が引き上げられていくラチェット型なんていうものもあったりします。
念の為前提を確認しておきましょう。
最低保証がついている保険金の支払いが発生した時点で、特別勘定残高が最低保証額を上回っている場合は、特別勘定残高を保険金として支払います。
一方で特別勘定残高が最低保証額を下回っている場合は、保険会社が最低保証額までの穴埋めをして、特別勘定残高と保険会社による穴埋め額、合計して最低保証額を保険金として支払います。
それで、この最低保証機能が本当に厄介なんですね。どう厄介なのか、リスクの観点から見ていくことにしましょう。
最低保証リスクの基本的構造
変額年金保険では、保険会社は契約者の運用資産である投資信託と、投資信託が最低保証額より低い場合にその補填をするという最低保証機能を持つ一般勘定の管理が求められます。
一時払いの場合(通常はリスク管理の観点から一時払い)、まずそれを特別勘定に全額突っ込みます。資産運用は原資の大きさが大事なので、新契約費用を含めた各種費用は後から徴収することによって運用資産をできるだけ多く取ります。その運用成果たる特別勘定資産から、最低保証額までの穴埋めのための原資となる最低保証料、契約の募集締結のための費用を吸い取るわけですが、これは特別勘定残高の一定割合を毎日継続的に吸い取っています。額ではなく、率で費用をもらうのは他の保険と同じですね。保険金額が10%増えたら保険料も10%増えそうだし、特別勘定残高もなんとなく10%増えそうですよね。そういった契約者にとっての理解の側面と、特別勘定残高が低迷してしまった契約についても、額ではなく率であれば費用を徴収することができそうなものですよね。お財布の中に500円しか残っていない人に1000円くれと言うのは無理でも、500円の30%くれと言うのはできそう、そんな印象です。ただ、特別勘定残高がそれほど低迷するまで保険会社がほったらかしにすると言うのも考えづらいですね。実際、特別勘定残高が一定額を下回ったら全額一般勘定に移すというノックアウト型も存在するようです。最低保証料収入については、特別勘定から吸い取られて一般勘定に突っ込まれます。これが特別勘定残高と最低保証額の差額を補填するための原資となるわけですね。
最低保証はオプションとして整理されることがしばしばあります。はてオプションとはなんだったか、と思い返してみると、権利行使のタイミングで原資産価格と行使価格によって定まる額を得ることができる権利のことでした。最低保証についても、特別勘定残高と最低保証金額によって定まる額を得ることができる権利ですね。権利は自分の意思で行使できませんけど。同様の理由で解約についてもオプションとして整理されることがあります。
変額年金保険の最低保証の構造は最低保証付きの投資信託の構造と似ています。変額年金保険の場合は特別勘定残高が高ければそれだけ多くの額を受け取ることができる一方で、最低保証によって受取額の下限が決まっている状況です。最低保証付きの投資信託は、最低保証が定められており、投資信託の運用が好調ならばそれだけ超過収益を得ることができます。
最低保証付きの投資信託の場合は最低保証に相当する部分を割引債を用いて複製し、コールオプションによって超過収益を狙うという構造になっています。割引債については満期まで保有していれば基本的に最低保証額となって返ってくるので、契約期間中にポートフォリオを組み替える必要性がなく、管理が容易です。変額保険の場合は運用成績によって上下する特別勘定残高という原資産、原資産が下振れたときに最低保証までを補うという最低保証オプション(原資産価格が下落したときに価値を持つプットオプションと同じ性質)から構成されていると解釈することができます。
コーポレートファイナンスにおけるプットコールパリティからこれらの2つのポジションは等価であることが示されますが、変額保険の場合は被保険者の生存および死亡、または解約によってキャッシュフローが変動してしまうので、金融市場で流通している金融商品でキャッシュフローを完全に複製することは困難です。頑張ってそのキャッシュフローに寄せる複製をすることになりますが、完全な複製ではないので随時ポートフォリオを組み替える必要があります。これを動態的なヘッジと言います。
投資理論の記憶が残っていらっしゃる場合は、オプションの複製問題を想像していただくと良いでしょう。ヨーロピアンオプションの複製は途中で組み替える必要がありませんでしたが、アメリカンオプションの場合は途中で組み替える必要がありました。解約(解約返戻金の最低保証をつける場合もあるらしいです)や死亡における解約返戻金や死亡保険金の最低保証に対応する支払いを、満期以前のある時点での最低保証オプションの行使と解釈すればアメリカンオプションの複製と同様に見ることができるので、途中でポートフォリオを組み替える必要があるな、というところと繋げられるかと思います。
金融リスク
まずは金融面からのリスクについて考えます。
1つめは、原資産となる投資信託に対するヘッジ手段が市場に存在するとは限らないという点です。特別勘定残高は運用成果によって上下しますが、リスクと言われると運用成果が低迷し、特別勘定残高が予想より低くなってしまう状況を想定します。伝統的保険商品であれば、国債などで運用していることから、国債を原資産とするプットオプションによって国債価格が下落するリスクをヘッジ(軽減)しますが、変額年金保険の場合はもともといろんな株式や債券がごちゃ混ぜになっている投資信託に対してヘッジすることとなります。時間の経過につれて投資信託のポートフォリオが変化することもあるでしょう。そうなるとリスクヘッジ担当者としてはため息しか出てこないわけですね。また、もともと完備市場ではないので、欲しい商品が市場に並んでいるとは限りません。
2つめは、最低保証料収入が不足するおそれがあるという点です。特別勘定残高が減少して保険会社が負担するべき最低保証額との差額が大きくなるときほど最低保証料収入が小さくなるというミスマッチ構造があります。わかりますかね?
最低保証料や契約の募集締結のための費用は、特別勘定残高の「一定割合」をもらっています。つまるところ最低保証料収入は特別勘定残高に比例するので、特別勘定残高の減少に伴ってこれらの収入も減少します(契約の募集締結のための費用:予定事業費についても同様)。一方で特別勘定残高が減少すると保険会社はそれだけ多く、最低保証額までの差額を補填しなければいけないことになります。収入が少ないのに支出が多くなってしまう、これはまずいですよね。
3つめは、最低保証オプションが長期で原資産が投資信託という特殊性に加え、保険リスクとの積の構造をもつために金融市場での完全な複製が不可能という点です。キャッシュフローがわかれば株式や債券を使ってそのキャッシュフローを再現することができることは投資理論の教えるところですが、キャッシュフローが契約者の生存または死亡という非金融的な確率に依存するため、どうすんねんという気持ちになります。一般的な金融リスク管理手法だけでは対処不可です。困ってしまいますね。
ここまでで述べた
・保険期間の長期性、原資産が投資信託という特殊性、保険関係リスクにも影響を受けることを根拠として、最低保証オプションは金融市場で複製することが困難であること
・最低保証料収入が特別勘定残高に比例して徴収する都合上、最低保証に関するミスマッチ構造が存在していること
・最低保証オプションの行使が保険リスクと密接に関係することから、金融商品での完全な複製は不可能であること
を金融リスクといいます。
保険リスク
リスクヘッジが大変ということがわかりましたね。もうお腹いっぱいと言いたいところですが金融リスクだけではありません。保険特有の側面から見えてくるリスクについても見ていきましょう。
1つめは、リスク収斂性が劣後するという点です。保険商品の基本は大数の法則です。平均と分散が同一である独立なサンプルを大量に集めるとなんとなく元の分布の性質が見えてくるというものでしたが、なんと独立性に疑念が生じています。死亡に関しては伝統的保険商品と同じ感じがしますが、特別勘定資産は独立ではなさそうです。
というのも、特別勘定資産は契約者がそれぞれが勝手に運用するのではなく、保険会社が提供するいくつかの選択肢から契約者が選択するため、ある契約者の特別勘定資産がまずいときは、その契約者の資産投下先の運用状態を通じて他の契約者と割と強い相関を持っているために他の契約者の特別勘定資産もまずいことになっている可能性が高いわけですね。すると、被保険者の死亡に際して保険会社が補填すべき特別勘定残高と最低保証額の差額についても相関が出てきてしまうわけで、慎重に対応すべき問題となっているわけです。
2つめは、ミスプライシングのリスクです。変額年金保険では危険選択が比較的緩かったり、最低保証率を年齢性別に依らない一定の値を使用したりするみたいです。危険選択が緩い傾向にあるのは怠慢ではなく、販売側の要望です。変額年金保険は銀行等の金融機関における窓口販売が主な販売チャネルとなっていますが、投資信託の手数料慣行に倣って窓口販売に多い高齢者に優しい感じになっています。よって契約群団が想定していたものとは異なるものになってしまって、最低保証料収入が不十分になってしまうおそれがあります。
ちなみに、保険料の十分性の議論は1-1営業保険料をはじめいろんな場所で指摘されていますが、変額年金保険において保険料に相当するのは最低保証料です。特別勘定残高は保険金支払時に全額契約者のもとに行ってしまいますからね。
3つめは、解約動向のモデルリスクです。1-10商品毎収益検証において解約率はいろんなファクターに影響されて予想が難しいのに収支に与える影響が大きいという厄介な性質を持つことが説明されています。
変額年金保険の解約率については、特別勘定残高が低くなると、契約者にとっては保険会社が補填してくれる額が大きくなっておトクなので解約率は減少するということが考えられます。解約オプションの最適行使を想定すると保険料率が契約者には受け入れ難いほど高額なものとなってしまうことがあります。また、すべての契約者が最適行使するというわけでもないので、その辺の不合理性をある程度織り込んでいます。そして解約率に関する統計は少なく、頑健性についても注意が必要です。
ここまでで述べた
・リスクの収斂性が劣後することによる伝統的リスク管理の限界
・契約時審査の甘さに起因するミスプライシングリスク
・解約行動のモデルリスク
をまとめて保険リスクといいます。
保険リスクは金融リスクと比べても無視できない水準ですが、とはいえ第一に考えるべき最大のリスクは金融リスクであるようです。
ということで、最低保証をつけたが故にさまざまな問題が出てきました。これからはこれらの問題に対処するためにはどうしたらいいかを考えていくことになります。
まずは、これらの論点が定性的なので、まずは定量化する手法について見ていきましょう。
変額保険数理
この辺りでいったんお金の流れを整理しておきましょう。
まず、一時払の保険料を特別勘定に投げ入れます。
運用していく中で、最低保証料や予定事業費、運用関係費用(信託報酬等)を毎日特別勘定残高の一定割合を特別勘定から徴収します。最低保証料については一般勘定に移動します。
最低保証のついた支払いをするとき(年金額保証や死亡保険金保証もあるし、原資保証の場合もある)、特別勘定残高が最低保証額未満ならば一般勘定から穴埋めされて最低保証額が支払われます。この穴埋めが大きくなるリスクのことを最低保証リスクと言います。
ここで変額年金保険におけるプライシングとは、特別勘定から徴収する一定割合をどれくらいにするかということを指します。
最低保証を一種のオプションとする見方ができることは先に述べましたが、キャッシュフローのタイミングや金額は金融要素と保険要素が関わってくるので、金融市場に流通している金融商品でそのキャッシュフローを複製(投資理論を覚えていない人は"再現"と読み替えてください)することは難しいでしょう。これを非完備市場問題といいます。
市場が非完備であるとは、都合のいい金融商品が存在しないということです。市場が無裁定であると仮定した場合、「市場が完備であること」の必要十分条件は「リスク中立確率が存在すること」なので、こうした非完備性はリスク中立確率が存在しないことを意味します。よって投資理論で学んだコーポレートファイナンスだけでは対応できない、ということになります。
ということで、保険数理的手法のみの場合でも、金融的手法のみの場合でも対応できないので、これらを融合してなんとかしようということが考えられているようです。実際、EUのソルベンシーIIにおける技術的準備金(保険債務に対する準備金の一で、技術的準備金は予期される損失に当てられる部分をいい、他にはソルベンシー所要資本と最低所要資本がある)の評価でも採用されており、金融商品によるヘッジが可能な部分は市場整合的評価、ヘッジが不可能な部分は最良推定にリスクマージンを上乗せして評価することとしています。
変額保険に用いられている代表的な計算原理として、分位原理と期待値原理が挙げられます。
CTEアプローチ
VaRは直感的な理解がしやすく、他者への説明が容易であるという利点があります(200年に一度のリスクとか)。しかし、信頼区間外のリスクを把握することができないこと、凸性がないことからリスク分散効果を正しく認識することができないことがあるといった欠点を持ちます。VaRに代わるリスク尺度として、リスク尺度が満たして欲しい要件を満たすもの(コヒーレントリスク尺度)が求められ、CTEが生まれました。しかし、CTEにもまた、複数期間にわたるリスク尺度としては不適切であるという問題が指摘されています。これをこれを通時一貫性がないというように表現します。
ノート3の解釈としては、時点2を時点1において評価したCTE95%はuおよびdのそれぞれで50および100となりますが、時点1を時点0において同様の評価をすると50になる確率が94%、100になる確率が6%なので、CTE95%は100になるはずです。しかし、時点2を時点0で評価することを試みると、94%で0、5.64%で50、0.36%で100となることから、VaR95%は50で、ES95%は(100-50)*0.36%で0.18、よってCTE95%は53.6と計算されることとなり、先の結果とは異なる値となっています。よくないんじゃないですかね、という問題が通時一貫性の問題です。
CTEアプローチではモデルパラメータを固定した上で原資産の価格変動のみに着目し、その枠組みの中で最低保証の価値評価と必要資本要件のためのリスク評価を行う方法です。同じ枠組みで計算することができる点が偉いということですね。
また、CTEアプローチでは、前提としている分布が既に悪化シナリオを想定したものであることから、ここから保守的にするための手段を講じる必要がなく、分布のどの辺を切り取ってCTEとするかを考えることとなります。
リスク調整済み期待値アプローチ
無裁定価格の導出のためのリスク中立測度を含む、広くリスク調整に相当する測度変換後の確率分布のもとで期待値を取る手法です。
CTEアプローチは分布の一部しか使わない手法でしたが、やっぱり分布全体を使いたくないですかということで、確率分布を適切に歪めてから(リスク調整)期待値を取ることで価値を評価しようとするものです。ワン変換とかエッシャー変換とかありましたが、彼らもリスク調整済み期待値アプローチです。確率密度関数f(x)を変換させたときの期待値として求めることができましたよね。できました。できないよって方は損保数理の教科書を引っ張り出して7-11とか眺めて見てください。それで、さっくりまとめると元々の分布を保守的に評価できる方向にグググっと持っていって、その分布の期待値を取ろうという話です。
投資理論で学んだBlack-Sholesモデルは、理論的な問題点が指摘されつつもその簡明性(解析解が得られるから)により広く扱われているモデルです。最低保証オプションの価値評価にも、最低保証の構造が簡単なものであれば適用することができます。教科書においても5-17あたりで示されています。5-18の算式の導出過程を載せておきます。
まあまあ大変でした。労ってください。


簡単な最低保証オプションにはBlack-Sholesモデルを適用することができるということがわかりました。ただ、よかったですねでは終われません。理論的な弱点が致命的では実用化することができません。実務家としては問題をきちんと認識しておく必要があります。
Black-Sholesモデルは対数正規分布を使用していますが、対数正規分布は株価収益率のファットテイルを表現できないという問題が指摘されています。訳がわからないので調べてみました。
まず、ファットテイルとは発生する確率が極めて低い事象を指します。2008年のリーマンショック以来注目を浴びているものです。このような大事件が起こってしまうとすぐに財務状況は真っ赤になってしまいます。あり得ないと思っていたら起きた、ということを教訓として、ちゃんとそういうことも織り込もうとする潮流が背景としてあります。
そして、株価収益率分布には得てして歪みがあり、左右対称ではありません。特定の分布によって再現することは極めて困難であり、微視的に見ていったところで必ず誤差が生じます。t分布のように自由度をもつ分布を使うことで、歪み、ファットテイルを表現するという例はあるようですが、これを対数正規分布によって、2つのパラメータだけを動かすことで再現することはまあ難しいでしょう。ただ、金融市場から逆算されるインプライドボラティリティーを参考にすることで、最低保証オプション価値の金融市場との整合性を高めることができます。
そして悪い点だけではありません。CTEアプローチの問題点である、通時一貫性を回避することができます。これは偉いですね。
さらに市場整合性を高める手段として金利の期間構造やオプション期間および最低保証の本源的価値に応じてインプライドボラティリティーを決めていくというものが挙げられていますが、一般の会社の事務能力でここまでするのは難しいでしょう。ちなみにボラティリティー曲面という言葉は、インプライドボラティリティーをオプション期間と最低保証の本源的価値の関数として考えたときに三次元空間に描かれる曲面を指していると考えられます。
なお、ここでいうリスク調整は最低保証の価値評価のためのものであり、必要資本要件のためのリスク評価には、別の枠組みとしてパラメータ変動による影響幅を見ていくことが必要となります。また、保守性については一切考えられていないので、責任準備金の算定のためにリスク調整済み期待値アプローチを用いる場合は、基礎率を保守的に設定することが必要になります。
ここまでリスクを定量化する手法とその論点について見てきました。
このリスク量の対応方法について見ていきましょう。
リスク管理とヘッジ
リスクへの対応としては回避、保有、移転、軽減が挙げられます。
わかりやすくするため、お腹が空いているけど外は雨が降っているという状態を考えましょう。
まず、回避というものは雨が降っているから外に出ないことを指します。雨に濡れるというリスクはほぼ確実に回避することができますが、外で食べ物を調達できるチャンスを逃しています。保険会社に置き換えると、リスクが嫌だから商品を売らない、ということになります。これでは何のための保険会社かわかりませんね。
保有とは、リスクを受け入れるということです。外に出ればほぼ確実に濡れてしまうが、食べ物を調達できるチャンスを手に入れます。保険会社に置き換えると、リスクを認識しつつ利益を得るためには破産することも覚悟、という状態です。公益性が高い事業で(そうでなくてもですけど)このようなよちよち歩きの運営は良くないですよね。
移転とは、リスクを他に移すということになります。基本は移転のためにコストがかかります。同居人にお小遣いを渡して買いに行かせるとか、出前を頼むといった対応ですね。保険会社にとっては再保険に相当します。再保険料を支払い、保有リスクの一部または全部を移転します。
軽減も同じような概念です。リスクを他に移すのではなく、自分で何とか軽減していく、というアプローチです。雨が降っていたら傘をさすということです。デリバティブを用いたヘッジ会計とかありましたよね。思い出してください。
保険会社のリスク管理には再保険やヘッジが有効です。ヘッジを用いる場合は、何をヘッジするかが重要となります。
経済価値のヘッジ
一番直感的な価値でしょうか。実質的な価値をヘッジします。
経済価値はDelta、Gamma、Vega、RhoというGreeksに分解して把握され、Deltaは先物、GammaやVegaはオプション、Rhoは金利スワップを用いてヘッジされます。Deltaは原資産に対するオプション価値の感応度なので、変額年金保険においては特別勘定資産があまり変動しない短期間のヘッジをする際に有効です。しかし、特別勘定資産の一階微分ですので特別勘定資産が大きく変動した場合にはヘッジした部分がきちんと機能しない危険性があります。急激な変動に対応できない点に問題を抱えています。他にも、金利水準の変化には対応できない点、短期のヘッジを繰り返すことによるヘッジ再構築コストも問題となります。
ここで注意しておくべきなのは、通常経済価値という語はリスク中立期待値を意味しますが、最低保証オプションの経済価値は、そのキャッシュフローを完全に複製することができないため、ある程度の安全マージンが織り込まれた数値であるということです。そのため、通常複製された本来のポートフォリオの価値よりも大きいものとなります。
一方、経済価値であるから負値も取りえます。特別勘定運用が好調な場合は、最低保証に係る収入価値が最低保証に係る支出価値を上回り、経済価値が負となることがあります。ヘッジが面倒なことになるようで、この場合はヘッジの簡便化を意図して最低保証に係る支出価値のみをヘッジ対象とすることがあるようです。
また、会計上の最低保証価値は必ずしも経済価値評価されているわけではないので、会計とのミスマッチが発生しうる点にも留意しておく必要があります。
会計価値のヘッジ
最低保証の会計価値の変動を抑制することを目的とします。会計上の数値がブレブレだと、株主目線で「この会社大丈夫なんか?」となってしまってあまりよろしくないわけですね。会計上の数字の変動を抑制することは、株式のボラティリティーを安定させるために必要というわけですね。
しかし、会計上は法定会計に基づいて計算される数字が表示されるので、会計制度について理解しておく必要があります。大きな特徴として、責任準備金は負の値を取らないこと、責任準備金は標準責任準備金の計算基礎率を使う一方で市場に流通している金融商品は同じパラメータを持つとは限らないことが挙げられます。これは価値がジャンプしたり微分不可能になったりすることを意味し、会計価値を完全に複製することが非常に難しいということになります。
また、標準責任準備金制度では責任準備金の計算基礎率はロックインされます。予定利率や死亡率、ならびに期待収益率やボラティリティーについて「この値を使って計算してください」と平成8年大蔵省告示第48号に具体的な数値で示されています。するとこれらの値の変動が0として認識されるため、VegaやRhoに関するリスクは会計上の数値では認識されないということになります。よってDeltaやGammaのヘッジをメインに行なっていくこととなりますが、Gammaについてはヘッジの際に主にオプションを使用することから、Vegaのリスクを通して変な影響が出てきてしまいます。よってGammaでのヘッジも難しいということになり、基本的にはDeltaでヘッジをすることとなります。
テイルリスクのヘッジ
テイルリスク、つまり起こる確率は低いが起きたらまずい状態のもとでの財務諸表上の数値の変動を抑制することを目的とします。基本的には、起こったらまずい状態を想定したストレスシナリオにおける損失額に対応するプットオプションを買い持ちしておくという、静態的なヘッジ(時間の経過につれてヘッジポートフォリオを組み替える必要性があまりないもの)が想定されます。
しかし、金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号)IV-3第31項において、ヘッジ会計が適用できる要件として、
・当該ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従っていることが客観的に認められること
・ヘッジ取引時以降についてもヘッジ手段の効果が定期的に確認できること
が定められています。
前者の要件は比較的容易に示そうですが、後者の要件がなかなか厳しいんですね。
金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)第156項において「原則としてヘッジ開始時から有効性判定時点までの期間において、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計とを比較し、両者の変動額等を基礎にして判断する。両者の変動額の比率がおおむね80%から125%までの範囲内にあれば、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると認められる」と定められており、変動の比率が80~125%でないとヘッジ取引とは認められないということになります。
ヘッジ対象となる最低保証オプション価値は基本的に変動するものですが、テイルリスクに焦点を当てたプットオプションはインザマネーになる状況が限定的であることから、基本的にはすごく乖離します。つまり、これらの変動は連動しないのが一般的であるため、法定会計上ヘッジ取引とは認められないことになり、外部関係者目線では「なんでこのオプション買ったんですか?」と突っ込まれてしまうということになります。株主総会とかできちんと説明しましょう。
再保険
保険会社にとって変額年金保険のリスクヘッジが大変であることはこれまで見てきた通りです。一方で、競争環境において最低保証価値が高価値なものにシフトしていくことは避けられません(競争環境では商品内容は魅力的になっていく)。よって企業内だけで何とかしていくのは限界があるというものです。
会計とのミスマッチを回避するためには、責任準備金の削減が可能な共同保険式再保険の活用が望ましいですが、再保険会社への集中リスクや信用リスクについてもきちんと考慮しておきましょう。
生保1の山場であることに間違いないでしょう。ただ、全体の流れがわかると各論点がわかりやすくなるかと思います。皆さんの勉強の一助となれば幸いです。
徒歩参詣
人生でやりたいことリストの1つ、徒歩参詣を果たしました。
東京の日本橋麒麟像から三重県の伊勢神宮まで歩くというものです。
概要
この日記で書く大きな流れとしては
・背景
・そこで見たもの
・同じことをする人へ
・後日談
という感じです。
よろしくお願いします。
背景
4月から就職するわけですが、時間がかかる挑戦というものは学生最後の春休み中にしておくべきですよね。行動力のある多趣味人間を自負していますが、中でもまとまった時間が必要なものは旅行でしょう。
海外?行ったことのない島嶼部に行く?
いずれも働いてお金を稼いでからでもなんとかなりそうです。本質は、行き先ではなく何で行くか?という問題でした。飛行機、車、電車、船、自転車、いろいろありますが徒歩という選択肢がここで挙がったのです。周りの誰もやっていなくて(賞味期限がない話のタネになる)、自分もこれまでにやったことがなく、社会人になってからではおそらくできないであろうという今やるべき要素を満足していました。
すると今度は目的地です。四国のお遍路巡りをするという考えもありましたが、予算の都合と不慣れでセーブポイント(宿泊地)が欲しいということで却下、そこでお伊勢参りが挙がりました。調べてみると江戸の一大ブームとなり、およそ6人に1人がお伊勢参りをしたといいます。途中の宿場町には伊勢参りの人を無料でもてなす風習があったらしいのですが、飛脚や川を越えるときのお金を含めて、現在でいう170万円ほどの資金が必要となったそうです。それが今や東京駅の機械に2万円突っ込めば数時間後には現地です。便利になったものですね。
学生だとネットカフェで学割が効くので、快活クラブという系列ネットカフェで夜を明かしつつ東海道を進んでいくことにしました。夏は熱中症になっても誰も助けてくれなさそうということで、空気が乾燥している時期に決行しました(雨が降らなさそうだし)。計画自体は8月にしたので、半年待ちましたね。
そこで見たもの
旅をするときは毎回テーマを決めているのですが、日本人として東海道を歩き、天照大御神にご挨拶したいという想いで「江戸時代の伊勢参りを体験しよう」にしました。
2月の半ば、友達に背負うタイプのリュックを借り、日本橋に立ちました。

途中の日吉では慶應義塾大学が学部入試を実施していました。
1日目は昼くらいにスタートしたのであまり歩けず新横浜で夜を迎えました。基本的には国道1号線に沿って歩いていきます。

江ノ島には友達の別荘(*1)があるので、そこで泊まらせてもらいました。そこの管理人さんには「やってることヤバすぎワロタ」という感じの反応をされました。至極当然です。
ちなみにこの日、家庭教師をしていた高校生から慶應合格の報を受けました。嬉しい限りですね。
喜びも束の間、待ち構えるのが箱根越えです。標高は1000メートルを超える箱根峠、ありえないほどの急斜面、そして雨。江戸時代の石畳を通りましたが、ぬかるんでとても滑りました。なんで石畳にしちゃったんですか?

ここで肉離れでもしたらきっと誰も助けてくれません。痛む脚を庇いつつ慎重に歩を進めました。暗くなる前になんとか三島まで降りてくることができましたが、足の裏はマメだらけです。江戸時代の人も毎晩マメをつぶすのが日課だったようです。にしても健脚だな。
脚が痛くなるとはどういうことか、具体的に説明してみます。まず膝の裏の筋肉が張り始めます。階段を登るときに体重が掛かると「ピキッ」となります。けっこう怖いです(ケガしたらチャレンジ終了なので)。それをかばうと脚の付け根、鼠蹊部が痛み始めます。そして同じくらいに靴擦れによる表面的な痛みが現れます。休憩できる場所に腰をおろすと、筋肉が固まります。運動部だったのですがこれは初めて経験しました。座ったときの膝の角度に固定されてしまい、本当に歩けなくなるのです。ぐぐぐっとなんとか曲げても痛い、伸ばしても痛いという状況で、本当にしんどかったです。
シップは毎日20枚くらい使いました。いろいろ試しましたが、サロンパスが最強でした。同時に筋肉をつけるため、毎日プロテインを飲み、静岡ではさわやかでハンバーグを食べました。すると静岡市あたりから体が慣れ始め、寄り道や考え事ができるようになりました。普段はヒキニートしているので、「おい普段自重すら支えてないんだからこんなことできると思うなよ」と脚に怒られていましたが、少しずつ静かになっていくのを感じると人間の順応性の高さに感謝という感じです。
途中、富士市では久々に晴れて綺麗な富士山を拝むことができました。インスタグラムで有名なスポットを通りましたが、被写体がブスすぎたので自分の写真は撮りませんでした。

富士山って本当に大きいです。押上でスカイツリーを見たときの感覚に近いです。そしてこんなに高いのに、周りに高い山がなくて裾野が綺麗に映るのが偉いんですよね。人生でやりたいことリストのうちの1つに富士登山があるので、いつか登りたいですね。ちなみに江戸時代の人は伊勢参りの帰りに寄り道して富士登山していた人もいるらしいです。健脚どころの騒ぎじゃねえぞ。
富士を出ると難所、薩埵峠です。割と海沿い歩いているんですけど、関係なく山や峠があります。メンヘラみたいです。

現代文明のおかげで海沿いを辿っていけます。東海道線、国道1号線とともに富士山を望みます。
由比、清水と進み、ようやく静岡です。静岡ではお店の開拓をいくつかしました。途中途中で美味しいものを食べていかないとやってられません笑。まずはおそば。

ずっと行きたかったお店の1つです。イタリアの塩、静岡のわさび、天ぷらをお供に。塩を少しつけて蕎麦を啜ると薫りが立つので大好きです。
食べてみると今まで味わってきた中でも指折りの薫り高さです。店主さんが「これ美味しいでしょ笑」とニッコニコで色々教えてくれました。産地は秘密にしてほしいとのことですが、チベット在来という種類を使っているようです。2枚目は長野県黒姫産。やはり蕎麦は国産に限りますね。近くにあったら通うレベルです。静岡に来たらまた寄ります。
静岡を出るとすぐに安倍川です。安倍川餅の元祖、創業は文化元年、昔ながらの茶屋という雰囲気のお店で安倍川餅を食べました。

つきたての柔らかさ、米を強く感じる味わい。漉し餡ときな粉と砂糖で。ばかうめえですね。静岡土産にありだなあ、と自分用メモに加えます。静岡駅から徒歩で15~20分くらいです。
国道を少し外れ、静岡の山間部に。東海道五十三次でいう岡部宿、宇津ノ谷です。


絵を見た瞬間に「あ!ここじゃん!」となりました。写真だとわかりづらいですが、背後から写真の左くらいを川が流れています。同じ画角で撮りたかったのですが、普通に川の上で行けませんでした。
浜松を越えると浜名湖で、愛知県との県境です。東海道新幹線によく乗る人は「なんか海の上走ってね?」となるあの場所です。実際、浜名湖は汽水湖で、湖には海水が混じっています。
うなぎを食べたかったのですが、高いのもありますし営業時間と待ち時間の兼ね合いから今回はパスしました。諦めてコンビニでおにぎりとか買って食べました。今思えば餃子食べればよかったですね。

赤鳥居の奥に見えるのが国道1号線、歩行者は入れません。
愛知県に入ると雰囲気が変わります。フィーリングな部分になるのですが、静岡と愛知って何かが違いますよね。山肌の茶畑から平地のキャベツ畑になり、景色が変わる、という感じの。あと愛知県に入って牛を見ました。いや、見てないけど、そういう強烈な匂いがしました。
東海道はこんな感じの松並木が見られます。徳川家康公が街道整備の一環で、一里塚とともに置かれ、木陰や風雪しのぎの場を与えたようです。私が歩いた時も「あ、この道で合ってんだな」という安心感を得られました。

そういえば豊橋は家康公の本拠地でしたね。ちゃんと感謝しとけばよかった。
豊橋からは渥美半島に抜けました。コンビニはないし、お店もありません。山はあります。

渥美半島は初めてきましたが、菜の花が名物らしいです。
船で鳥羽まで抜けました。三重県のイメージが松阪牛と伊勢海老しかなくて。一人で松阪牛食べるのは流石に虚しいがすぎるので伊勢海老だけでも、と思い食べてきました。

鳥羽からは3時間程度で伊勢市です。
ゲストハウスに荷物を置いてウイニングランです。まずは外宮です。

お参りして、1時間ほど歩いて内宮です。この頃には「5kmか、余裕で歩けるな」という思考になっていました。


感動です。知床を訪れたとき、すごくいい曲を聴いたとき、そんな全身が震える感動をしました。
伊勢に宿を取ったので、早朝にもう一度お参りしました。京都のお寺もそうですが、本当に行きたい場所は朝の5時や6時くらいに行くととても空いていていい写真が撮れます。




早朝の、木々に囲まれた参道の厳かな空気を感じます。
大変という言葉では表せないほど大変な旅で、これまでの人生で指折りに苦労したことに入るのは間違いありませんが、やってよかったと思います。
同じことをする人へ
まずは持って行ったものです。
携帯(宿を探す)
充電器
財布(小銭はできるだけ作らない)
着替え一式(上と下1着ずつと下着を何枚か)
カミソリ(ネットカフェにはない)
御朱印帳
非常食
東海道には多くのコンビニがあり、非常食は不要でした。荷物を軽くするために箱根を越えたあたりで食べました。
行動時間は大体7時くらいから17時くらいですね。19時を過ぎると暗すぎて歩けません。

浜松市街地から数キロでこの暗さです。こうなると車の灯りで歩道を探すしかありません。こうなる前に宿にたどり着いている必要があります。
そして重要なのがマップアプリを過信しない、ということです。実際に行ってみたら歩行者が通行できない、というものもありました。トンネル、高架、海沿いは特に注意し、前日の段階で通行可能かどうか、グーグルアースのような機能で実際に歩道があるかどうか、歩けるかどうか確認しておくと良いでしょう。
また、水分管理も重要です。山間部、田舎ではコンビニや公園、お店も少なく、トイレに困ります。喉が渇いて困ったことよりも、トイレに行きたくて困ったことの方が圧倒的に多かったです。
後日談
伊勢のゲストハウスの人に聞いた話ですが、内宮と外宮ではなんかバチバチしてるみたいです。内宮の周りはあまり宿を作らず、全て外宮に任せていて、一方で内宮周りはおかげ横丁を中心に飲食系が栄えていますが、外宮はさっぱりです。
そして内宮周りの飲食店は17時くらいに一斉に閉まります。観光地らしくないのですが、これもいざこざの影響、らしいです。
帰りは青春18きっぷで帰ってきました。せっかくなので前から行きたかった長崎に寄ってきました。

こういう無茶な行程を組めるのは一人旅の特権ですね。
*1 50歳くらいの友達。参加していたインターンシップの主催の人で、そこで仲良くなって「お前東大生だからウチの子の勉強みてくんね?」という家庭教師の関係になり、内申オール3で私立高校しか見えない状態から偏差値70の公立高校に合格させた。「あなたのおかげでここが買えたからいつでも来てね」と言われている。潮の匂いが嫌いなのであんまり行ってない。
24卒アクチュアリー就活
「アクチュアリー」は実質的に閉じた世界であり、アクチュアリー試験についても就活についても情報が外部に回ってくることはそう多くありません。かつて就活という情報戦で苦労した自分のような人のために、去年のことを思い出しつつ、ブログという形で公衆の縦覧に供する媒体で書けるところだけ書こうと思います。
概要
この日記で書く大きな流れとしては
・自分の就活の流れ
・感想
という感じです。
よろしくお願いします。
前準備
12月のアクチュアリー試験まではその勉強に集中し、2月の結果発表で3科目取れていました。後述する数理試験では、アクチュアリー試験に合格する能力があるかを見ているので、ここで数学を取れていれば数理試験は無条件にパス、という会社もありました。
私は1月から就活を始めたので、そこからの流れについて見ていきます。
説明会、インターンシップ参加
最初は某ナビ、某ナビ、某ナビといった就活サイトに登録し、会社の説明会、説明会を兼ねたインターンシップに行きます。1月から2月にここを体験しました。このうち理系ナビでは、アクチュアリー試験の模試で1位を取って景品とかアマギフとかもらったり、そこで仲良くなってそこそこ高い居酒屋を奢ってもらいました。機会があれば宣伝しといて、と言われていたので宣伝しておきます。面接対策とかしてもらったのでかなり助かりました。
さて、このステップは必須ではないので私は生保と損保で1社ずつインターンに参加し、それぞれが何をする会社なのかを知りました。ちなみに、生保損保以外には年金や監査法人といった選択肢がありますが、基本見てませんでした。将来のキャリアから逆算すると最初は保険会社だなあと考えていたからです。インターンに参加すると、基本的には就活のステップで優遇を受けられます。特に、グループワークで担当の社員がつく場合はグループワークを重視していると考えて良いと思います。
インターンは参加するだけで優遇を受けられるので楽です。参加する意義を考えるならば、その会社に集まる学生のレベル感を理解できる、といったことが挙げられると思います。グループワークで全部の作業を私に押し付け、「過程を理解しているのはあなただけだから」と発表まで全て私にやらせたあの会社だけは絶対に行くものか、と思いました。いいことだけではありませんね。
ES提出
3月1日からES提出が始まりました。内容的にはどこも似たようなことを聞いてきます。どこも似たようなことを答えていましたが、面接で深掘りされても対処できるようにするためには、この段階できちんと練っておく必要があります。(企業に対して言えるような)大切にしたい理念は自分の成長?海外経験?働きやすさ?雇用の安定?社会に与える影響?それはなぜ、どのような経験でそんな考え方になったのか?というところをスッと説明できるようにしましょう。
どこの会社にESを出すか、という話になりますが、四大生保、三大損保も、その言葉自体もロクに知らなかったので日本アクチュアリー会のHPにある協賛企業名+新卒みたいな感じで調べていました。以下、個人的な偏見を示しておきます。
一般に外資は実力主義というが、専門職にはあまり当てはまらない
日系企業は基本養ってくれるが、ある程度の理不尽さ(怒られたり)はある
外資はその辺お給料と裁量制で対応
外資と一括りにするのではなく、親会社の本拠地(アメリカ?フランス?)を見るべき(cf. アメリカの会社はドライで実力主義)
学生経験で力を入れたこととか、なぜアクチュアリーなのか、といった設問は頻出なので、200字、300字、400字くらいのものを書いてコピペで対応していました。学生経験についてはチーム経験の方がウケがいいです。企業はチームで働く場所なので。私が使っていたテンプレを示しておきます。
志望理由 就職活動を始めたとき、自分自身がどのように社会に貢献できるかを考えたところ、自分の強みが(自分の強みかつAC職に必要そうなもの)にあると考え、アクチュアリーとして働くことを志し、現在はアクチュアリー一次試験のための勉強を進めています。そのためアクチュアリー職を志望しておりますが、その中で貴社はその(説明会、仕事体験、HP、インターン)にもあるように(会社が強みとしていること、企業理念)という印象を受けました。(自分の理念、考え)と考えておりますが、(企業理念、仕事の進め方を上手い感じに言い換える)その姿勢に共感し、貴社のアクチュアリー職を強く志望しております。
学生経験 学生時代には(学生経験の内容)をした経験があります。(そこであった困難)といった困難がありました。そこで(困難を克服するための工夫)という工夫を施しました。その結果(達成したこと)することができました。この経験から、私の強みが(分析力、傾聴力、課題発見/解決力ほか企業理念に合うものを選ぶ)であると考え、その強みが活用できる仕事に就きたいと考えています。
あと、生保への志望理由は人と長く関われるから、損保への志望理由はより一般的な課題解決ができるからという人が多いようです。
ESで落とされることは基本ないですが(一次締め切りで出しましょう)、ネットのESをコピペして落とされた人がいました。皆さんはちゃんと自分で考えて書きましょう。
ESを出したら基本Webテストがあります。受け忘れないようにしましょう。
数理試験
アクチュアリー職特有の選考ステップとして、数理試験があります。
インターンに参加していれば周りで過去問を持っている人がきっと一人はいるので、仲良くなってもらっておきましょう。試験範囲としては大体アクチュアリー数学の確率(たまに統計)、大学入試レベルの数学、大学初等レベルの数学(線形代数、微積分)といったところでしょう。微分方程式まで押さえていれば安心でしょう。
数理試験は足切り程度の認識でいいと思います。教養学部時代に雑にやった程度ままほとんど復習していない知識で、行列式ってなんだっけという状態でしたが、数理試験で落とされたことは一度もありませんでした。
・確率統計
指数分布、ポアソン分布、二項分布、一様分布あたり
・複素数
簡単な計算問題、複素平面で考えると簡単になるものとか
・極限
数列と組み合わさることもあるが、せいぜいロピタルで解決できるレベル
・積分
重積分が頻出、dxdyをrdrdθに置換するのを思い出しておく
・行列
行列式の計算、n乗の計算、対角化
・パズル系
配点次第でちゃんと捨てる
あまり出ない
・複素積分
きもいところは出す(問題量的に解けないところにあったりする)
面接
ESと数理試験は基本通るので、面接対策もしておきましょう。
最初は自己紹介で、必要なものは基本情報、過去の特徴的な経験(ここを深掘って欲しいというもの)、面接への意気込みです。私が使っていたテンプレを示しておきます。
(学校名)から参りました、(名前)です。 学生時代は(学業、サークル/部活、アルバイト、学外活動ほか)で(活動内容)という活動に注力しました。そこで培った(分析力、傾聴力、課題発見/解決力ほか)を活用する軸としてアクチュアリーを選択し、現在は大学院で研鑽を積んでいます。本日は緊張していますが精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いします。
ESの内容をもとに質問を飛ばしてくるので、面接前には自分が書いたESに目を通しておきましょう。私が受けた質問を示しておきます。これらに対する回答を経験や理由を含めて作り、さっくり言えるようにしておきましょう。
(学生経験について)それをしようとしたきっかけは何か
なぜ始めようと思ったか
始めた当時持っていた目標は何か
どのような業務に取り組んだか
その業務の中ではどのような工夫をしたか
チームの中での役割は何か
取り組んでいる最中に大切にしていた想いは何か ぶつかった困難は何か
その困難をどのようにして乗り越えたか
その解決法の策定プロセスは
なぜそのような困難が発生したのか
最も苦労した経験は何か
その経験を通して何を得たか その得られたものが活用できた場面はあるか
取り組んでいる最中に失敗したものはあるか
その失敗に対して今ならどのように対応するか
そのほか、時間を忘れて取り組んだものはあるか
ほかに学生時代に打ち込んだことは何か(合わせて3つあると安心)
なぜ生保/損保/年金か
なぜアクチュアリーか なぜうちの会社なのか(他社批判せず、会社を持ち上げる方向で)
会社に入って成し遂げたいことは何か
アクチュアリーを目指し始めたのはいつか
(院生で過去の専攻と異なる場合)なぜ専攻を変えたのか
志望度はどれくらいか(「第一志望です」と答えないと基本落ちる)
就活の軸は何か 他に受けている企業はあるか(「〜という就活の軸に沿って数社受けています」から入って企業名を続ける)
選考状況は
どんな研究をしているか(中身ではなく、どのような課題解決につながるか)
現在の社会課題に対して取り組んでみたいものは何か
趣味は何か
⻑所、短所は何か(短所はどのように克服しているかまで述べる)
周りの人にどのように言われるか(自己評価との乖離度をみている)
アクチュアリー試験は受けたか
最後に逆質問という形で「何か質問はありますか」と言われます。何もないですと答えると企業に興味がないと思われるでしょう。2問くらい用意しておくと良いですが、4問質問しないと時間が余りまくってしまうことがあります。新入社員に期待していることは何か、学生時代に後悔したこと、(面接官)から見て会社にどのような人が多いか、ということを聞いていた記憶があります。
また、面接を受けていれば落とされることもあるでしょう。優れている人が優れた学校に行くというのは企業にはあまり当てはまりません。どちらかというと相性です。体育会系だったり、面接官と働きたくなかったり、就活生側も選ぶ立場であることを認識しておく必要があります。もし志望度が高い会社に受からなくても、「きみも見る目がなかったのか...」と言いながら美味しいものでも食べましょう。
感想
面接でうまく答えられなかったときが一番しんどかったですが、FAQを作り始めて答えられるようになってからは面接も通過するようになり、割と楽しかった記憶があります。ある程度自分が優秀な方だと思っているなら、そこまで気にしすぎることはないと思います。就活生の方はいい企業に入れるように頑張ってください。
そういえばアクチュアリー試験のインセンティブってすごくて、一科目受かると年収が数十万上がったりするんですよ。余計に不安になるくらいならそのお金で何するか考えましょう。
サクッとまとめるつもりが長文で駄文で読みにくい文章になってしまったかもしれません。ご容赦ください。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
責任準備金対応債券に関して
まとめておかないと忘れてしまうので。
実務にまだ携わっていない個人の認識ですので、もしかしたら間違っているところがあるかもしれません。
概要
この日記で書く大きな流れとしては
・金利変動による財務諸表への影響に何とか対応したい
・保険会社からの要望により責任準備金対応債券が生まれた
・ペナルティーも(比較的)軽くて使いやすい
という感じです。
よろしくお願いします。
背景
金利変動がもたらす資産と負債のミスマッチの影響をできるだけ小さくしようという動きがあり、その一つとして経済価値ベースのソルベンシー規制の導入があります。
責任準備金の計算基礎率はロックイン方式なので、負債については簿価評価されるのに対し、資産については株式、債券によって運用されるため時価評価となるものもあります。このため、当初の予測から市場利率が大きく変化したときにサープラスの増減が発生することとなります。ALMでは資産と同じように負債を時価評価しようというモチベーションがあり、資産と負債のデュレーションを合わせることでサープラスの分散を最小化しようという考えがあるようです。デュレーションを合わせられると、利率変化による影響が同じ方向に連動して働くこととなるために分散が最小化する、と理解しています。
しかし一般に生命保険会社においては資産のデュレーションよりも負債のデュレーションの方が長くなります。保険期間は何十年、場合によっては一生というものもあり、非常に長期の契約となるのに対し、市中に存在する金融商品はそれだけ長い満期を持たず、長いもので40年国債という認識をしています。このミスマッチのために何らかの対応を取ることが求められている、というのが背景としてあります。
満期保有目的債券による対応
かんぽ生命やソニー生命では満期保有目的債券を用いて対応していました。生命保険会社の保有する債権はALM目的とするものが多いのですが、満期保有目的債券は償却原価法で評価するため、時価評価をしない資産ということになります。これは負債が簿価評価であることからALMの考え方と整合的であると言えます。
満期保有目的債券の欠点は金利上昇局面で表面化します。金利が上昇すると予定利率よりも市場利率が高くなることがあり得ます。そうなると契約者としては契約している保険から他の金融商品に乗り換えた方がお得、ということとなり、生命保険会社は契約を解約されてしまうということになります。解約には解約損益や解約控除といった論点が挙げられますが、ここでは解約返戻金を払い戻すための流動性が議論となります。
一般に保険契約を解約する際には解約返戻金を払い戻すこととなっています。
保険法 第63条
保険者は、次に掲げる事由により生命保険契約が終了した場合には、保険契約者に対し、当該終了の時における保険料積立金を払い戻さなければならない。ただし、保険者が保険給付を行う責任を負うときは、この限りでない。
生命保険会社は契約者の資産を金融商品によって運用しているので、契約者にすぐ払い戻せる形として持っている部分は少ないのです。金利が上昇して解約が増え、解約返戻金を大量に支払わなければならないという状況になると、保有する金融資産を現金化する必要性が生じます。満期保有目的債券は償却原価法で評価しているため、売却するときには売買目的有価証券に振り替えるとともにその含み損が実現することとなります。その結果、貸借対照表に大きな打撃を与えることとなります。
保険期間が長期となる生命保険契約では「満期保有目的債券はちょっとなあ」となるわけです。
話が飛んでしまいますが、そもそも利率上昇局面で保険契約を解約されないための対応として、予定利率を市場利率と変動させたり、あるいは解約返戻金を支払うための流動的な資金需要に応えるためにちゃんと投資できなかったから、その分は契約者が負担しなさいという名目で解約返戻金から市場利率に対応した幾らかを差し引くMVA(Market Value Adjustment)といった商品設計を行なったりすることが考えられます。
責任準備金対応債券の導入
上で見たように生命保険会社の財務には、
・責任準備金がロックイン方式で評価される
・超長期の債権を多く保有する
・本当に長期の負債に対応する金融商品が存在しない
という特性があります。これを受けて責任準備金対応債券が導入され、業種別監査委員会報告第21号において責任準備金対応債券とみなされるための要件が示されています。
1. リスク管理を行う管理・資産運用方針を策定していること
2. リスク管理体制が適切に整備・運用されていること
3. 小区分の設定と管理
4. デュレーションマッチングの有効性の検証と定期的検証
5. 金利変動に伴って価格が変動する債券で、変な債券(劣後債券や格付けが悪い債券)ではないこと
ここで個人的に感じた疑問は
・結局資産と負債のデュレーションが合わないのではないか
・小区分って何すか
というものです。会計士の人にぶつけてみました。
小区分というものは区分経理上の商品区分や保険種類ごとに考えるものではないようで、例えば30~40年後の負債キャッシュフローに対応する部分、というように設定するようです。加えて超長期の負債キャッシュフローに対する部分はレバレッジをかけて資本を拡充していくことで対応するみたいです。
有効性判定要件にも関わってくるのですが、管理のしやすさという点で優れているという話で、ALMの考え方と整合的ではあるがALMを完全に実現できるわけではないという点に注意する必要がありそうです。
有効性があると認められるためには、原則として小区分内においてデュレーションマッチングが±20%のレンジに入っていることが求められます。もし外れてしまったとしても、
・小区分内の債券をその他有価証券に振り替えなければならない
・2事業年度の間、小区分の変更や新規の責任準備金対応債券の指定に制限がかかる
のみであり、他の小区分に影響を及ぼさないこと、小区分内のペナルティーも2事業年度に限られているという点で偉いというわけです。
責任準備金対応債券は保険会社にのみ認められたというだけあって使いやすいものとなっており、ありがてえありがてえという話ですね。
ちなみに満期保有目的債券、責任準備金対応債券の他にも包括ヘッジを活用している会社もあります。
その他
デュレーションマッチングというのは、経済価値を金利で展開したときの一次の項を合わせるという考え方で、二次の項(コンベキシティ)の一致までは考えていません。よって金利が大きく変化したときにサープラスの変動は大きくなることがあり得ます。このような変動があるから、と諦めてちまちま調整するのが良いか、ちゃんとしたモデルを組み立ててある程度の変動でも有効性条件を満たすようにしておくのとではどちらが良いのでしょうね。後者の方がALMちゃんとしてそう、と言いたいものですが、この合理的な説明を与えるのが株価のボラティリティーという観点です。
ちまちま投資資産構成を変えることは、株価ボラティリティーの増加というデメリットとして跳ね返ってきます。資産と負債を合わせてみましょう、という考え方も経営上の観点の一つでしかなく、ALMと株価のボラティリティーを合わせてみましょう、もっと他のトレードオフについても考えてみましょう、ということなんだなと思いました。
こういう日記、書きたくなったらまた書きます。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
試験から1ヶ月経って、これまでとこれから
年も明けて2024年です。見識を広めようと年明けからいろんなものに指紋をつけています。というのも、4月から働くことになっていて、時間というものを意識したからです。
知らないものに触れる、知るというのは僕の人生の目標の1つとしているわけですが、とりあえず今年ちゃんとやろうということです。
[趣味としての店舗開拓]
美味しい食事をいただけるお店を増やしています。知り合いから「この辺で会わないか」と言われたときに、その辺りの美味しいお店をいくつか候補としてすっと出せる人ってカッコイイですよね。そう思って始めました。
東光という銘柄を出している小嶋総本店さんが15本限定で出したという日本酒が美味しかったです。村祐常盤のような甘味が広がる感じがして大好きです。
尾長鯛という魚も美味しかったですね。鯛としての旨みを存分に乗せていて、脂もしっかりあるのにくどくないという筆舌に尽くしがたいものがありました。
とまあ、美味しいものを勉強し続けているのですが、先週は美味しいカレーのお店に行きました。美味しいカレーは初めてだったので、評価軸を作れるまでいろんなところで食べていきたいですね。
[アクチュアリー試験関連]
アクチュアリー職の人とは切っても切れないもの、アクチュアリー試験です。12月に試験があり、僕は損保数理と会計経済投資理論を受けました。きっと受かっていると思います。落ちていたら怒ります。
これで一次試験がコンプリートされたことになるので、次は二次試験のお勉強です。
もともと生保よりも損保の方が面白そうだと思っていたのですが、就活中に幻滅していったため生保に行くことになりました。
会社のお金で教科書を買ってもらい、しんどいと噂の二次試験の勉強を始めました。
確かに勉強の方針は見えづらく、さっくり読んで過去問と睨めっこするのを数週間続けてみました。出やすい部分と出にくい部分、出題形式と分野の関係というものが少しずつ見え始めてきて希望が出てきたところです。
某会には所属していないので、自分が勉強するための資料として生保1の要点をまとめる作業を2月頭までにできればいいかなって思っています。
[読書]
これに加えていろいろ本を読むことにしました。ADHDって人の話が聞けないので、好きなだけ繰り返せるという点で本はいいです。
毎日何かしらの分野を1章読み進めることを目標にしています。
年明けから読んだ本は4冊です。
1冊目 企業価値評価 第7版[上] バリュエーションの理論と実践
2冊目 企業価値評価 第7版[下] バリュエーションの理論と実践
3冊目 数理統計・時系列・金融工学 (シリーズ・金融工学の基礎)
4冊目 日本国債入門
特に日本国債入門は話題の新書となっていたので読みました。専門的な内容なのに読みやすかったです。
VaRショック(176頁)はこれから導入される経済価値ベース評価基準においても同様の事件が起こり得ますよね。正会員の人に「システムを高度化させたいのはわかりますけど、そんな不完全なの導入していいんですかね」って聞いたら「その通りだねー」と言っていました。ソルベンシー規制も過渡期ということらしいです。
さて、今机に積まれている本はこいつらです。
金融商品取引法 https://amzn.asia/d/crtPjrV
Pythonでスラスラわかる ベイズ推論「超」入門 https://amzn.asia/d/9IwCAhr
Pythonではじめるベイズ機械学習入門 https://amzn.asia/d/5WgYWyU
入門Rによる予測モデリング https://amzn.asia/d/aYuwsFj
現代経済学の直観的方法 https://amzn.asia/d/5jcJknl
経済価値ベースのソルベンシー規制への対応 https://amzn.asia/d/3lE5A8p
金融商品取引法も分厚い本ですが、こういう分厚い本って燃えますよね。知らないことが大量に書かれている体系書って感じがします。
例えばインサイダー取引というのも、実は決定的な論拠があるわけではありません。情報格差について論じるのであれば、適切な手法で情報を入手したアナリストも規制の巻き添えとなってしまい、市場の効率性を損ねます。あるいは、経営者のような株主に対して信任義務を負っている人の詐欺行為に相当すると考える場合、今度は企業外部の人が規制対象となりません。「楽して儲けているのはずるい」という直観的判断も、そのような情報を得られる地位につくための労力を考えれば決して楽をしているとは言い切れないものです。
インサイダー取引規制の合理的な論拠は見つかりません。むしろ許容した方が市場の効率性は増すという主張もあります。話題になることが多いインサイダー取引は、市場参加者がなんとなく不合理に感じるから、という非合理的な規制が敷かれているというのです(金融商品取引法427-431頁)。
あとは機械学習系の本ですね。コーディングについては42Tokyoという場所で少しだけ触れただけですが、異常検知とかの方面に進めればいいなあと思っています。42Tokyoの入試自体が異常でしたが、これは機会があれば語りますか。
[その他]
カードマジックの練習最近サボっています。「カル」がちゃんとできるようになりたいです。
徒歩で伊勢参詣の準備を進めなければいけません。ただ、知り合いから儲け話が降ってきたらそっちやります。